被告人らが羽田空港ターミナルビルデイング内国際線出発ロビーにおける参加者約三〇〇名の集団示威運動を指導した場合につき、被告人らの右行為は可罰的違法性を欠き昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪は成立しないとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものである。
羽田空港ターミナルビルデイング内国際線出発ロビーにおける無許可の集団示威運動を指導した場合につき可罰的違法性を欠くとして昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪の成立を否定した原判決が法令の解釈適用を誤つたものとされた事例
集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)1条,集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)5条,刑法35条,刑訴法411条1号
判旨
東京都公安条例に違反して行われた無許可の集団示威運動は、公共の安寧と秩序を妨げる危険を招来させる点で、それ自体が実質的違法性を有する。したがって、処罰に際して「公共の安寧に対する直接かつ明白な危険」の存在までは必要とされない。
問題の所在(論点)
東京都公安条例が処罰の対象とする「無許可の集団示威運動」の成立において、構成要件該当性に加えて「公共の安寧に対する直接かつ明白な危険」という可罰的違法性の具備が必要か。
規範
集団行動は表現の自由として保障されるべき要素を有する一方、多数人の集合体の力による物理的危険を内包する。そのため、公共の利益保護の観点から設けられた許可制に違反する無許可の集団行動は、単なる手続違反にとどまらず、事前の対応措置の機会を奪い、公共の安寧と秩序を妨げる危険を新たに招来させる点で、それ自体が実質的違法性を有する。処罰にあたり、具体的・明白な危険という付加的要件は不要である。
重要事実
事件番号: 昭和52(あ)1518 / 裁判年月日: 昭和54年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動の無許可・条件違反を処罰する条例の適用は、当該行動が交通秩序阻害の程度を超え、著しく長時間の交通麻痺等の実害が発生する客観的な可能性を含み、公共の安寧に対し直接かつ具体的な危険をもたらすと認められる場合に合憲となる。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都条例に基づく許可を得ず、あるいは許可…
被告人らは、羽田空港ターミナルビルのロビーにおいて、約300名を集めシュプレヒコールや演説を行った。その後、一部の者がスクラムを組んで走り出し、制限区域である職員通路を駆け抜けて警察官と小競り合いを起こした。原審は、本件行為が東京都公安条例一条の「無許可の集団示威運動」に該当することを認めつつも、公共の安寧に対する「直接かつ明白な危険」が認められないとして、可罰的違法性を否定し無罪としたため、検察官が上告した。
あてはめ
本件において、被告人らは法定の許可申請手続を経ずに約300名という多数の集団を指導し、空港ビル内での示威運動を敢行した。このような無許可の集団行動は、行政当局による事前の交通秩序維持や公共の安全確保のための措置を不可能にするものである。集団行動が持つ潜在的な物理的力の危険性に鑑みれば、無許可でこれを行うこと自体が既に公共の安寧に対する危険を招来させており、実質的な違法性を備えているといえる。原審が判示するように、特に激烈・悪質な態様でないことや、具体的危険が明白でないことを理由に違法性を否定することは、条例の解釈を誤ったものである。
結論
無許可の集団示威運動は、それ自体が実質的違法性を有し、処罰の対象となる。原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
集団示威運動に対する「届出制」や「許可制」の合憲性を前提とした上で、その違反(無許可開催)に対する罰則適用の限界を示した。可罰的違法性の理論を用いて構成要件を限定解釈しようとする試みを否定し、形式的違反が実質的危険を伴うことを明示した点で、公安条例違反の事案における検察官の立証負担を軽減する射程を持つ。
事件番号: 昭和35(あ)112 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 破棄差戻
昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は憲法第二一条に違反しない。
事件番号: 昭和45(あ)1265 / 裁判年月日: 昭和49年6月18日 / 結論: その他
昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法二一条に違反しない(昭和三五年(あ)第一一二号同年七月二〇日大法廷判決・刑集一四巻九号一二四三頁参照)。
事件番号: 昭和40(あ)1050 / 裁判年月日: 昭和41年3月3日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例第五条は、憲法第三一条に違反しない。 二 右条例第一条の集団行動の許可管掌機関が「公安委員会」から「東京都公安委員会」と改正されても、同条の規定に違反して行われた集団行動の指導者または煽動者を処罰する同条例第五条の刑の廃止があつたものとは認められ…
事件番号: 昭和48(あ)2109 / 裁判年月日: 昭和50年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動に対し公安委員会の許可を要する条例であっても、不許可事由が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」に厳格に制限されており、原則として許可が義務付けられているのであれば、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:東京都条例第44号(東京都公安条例)は、集会、集団…