昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法二一条に違反しない(昭和三五年(あ)第一一二号同年七月二〇日大法廷判決・刑集一四巻九号一二四三頁参照)。
昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例の合憲性 刑訴法四一一条三号により破棄された事例
憲法21条,集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)1条,集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)5条
判旨
東京都公安条例違反の煽動罪が成立するためには、対象となる集団行動が無許可であることを認識している必要がある。政治家がその立場から政治的主張を訴える意図で演説した場合、集団行動の無許可性の認識を直ちに推認することはできず、犯罪の証明がないとして無罪とされるべきである。
問題の所在(論点)
集団行動の「煽動」罪において、対象となる行為が無許可であることの認識が必要か。また、政治家が政治的主張を述べる際、特定の集団行動が無許可であることを認識していたといえるか。
規範
東京都公安条例(昭和25年東京都条例第44号)5条の「煽動」罪が成立するには、煽動者が対象となる集団行動について、公安委員会の許可を受けていないこと(無許可であること)の認識(認容を含む)を有していることを要する。行為者の地位、演説に至る経緯、演説の内容等の諸事情を総合考慮し、無許可性の認識が合理的な疑いを超えて証明されない限り、有罪とすることはできない。
重要事実
日本社会党の国民運動委員会委員長であった被告人A(衆議院議員)は、1960年の安保闘争の際、首相官邸前で学生ら約3,000名が行っていた無許可の集団示威運動において、自動車上からマイクで「岸内閣がやめない限りゼネストを繰り返さねばならない」等の演説を行った。検察官は、これが無許可の集団示威運動を煽動したものであるとして起訴。一・二審は、集団行動の形態自体が合法性を欠くことから無許可の認識があったと認定し、有罪とした。
事件番号: 昭和46(あ)729 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: 破棄差戻
被告人らが羽田空港ターミナルビルデイング内国際線出発ロビーにおける参加者約三〇〇名の集団示威運動を指導した場合につき、被告人らの右行為は可罰的違法性を欠き昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪は成立しないとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものである。
あてはめ
Aは、野党の責任ある立場から政府批判や自己の政治的主張を訴える意図で演説しており、学生側の要請に応じて急遽挨拶に赴いたに過ぎない。演説内容は具体的な集団行動の指示に触れず、安保反対闘争を激励する抽象的な政治的主張にとどまっていた。当時の異常な社会情勢下では、無許可か否かを念頭に置いていなかったとするAの弁解は虚偽と断じきれず、単に集団行動の形態が非法権限的であることのみから直ちに無許可の認識を推認することは、重大な事実誤認である。したがって、無許可であることの認識を認めるに足りる証拠はない。
結論
被告人Aには、集団行動が無許可であることの認識があったと認められず、犯罪の証明がないため無罪である。
実務上の射程
煽動罪における故意(認識)の必要性を明確にした事例。特に政治家による街頭演説が、偶然居合わせたデモ隊等の無許可行動を「煽動」したとみなされる場面において、その政治的立場や演説の文脈を重視し、安易な故意認定を制限する枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和35(あ)112 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 破棄差戻
昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は憲法第二一条に違反しない。
事件番号: 昭和52(あ)1518 / 裁判年月日: 昭和54年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動の無許可・条件違反を処罰する条例の適用は、当該行動が交通秩序阻害の程度を超え、著しく長時間の交通麻痺等の実害が発生する客観的な可能性を含み、公共の安寧に対し直接かつ具体的な危険をもたらすと認められる場合に合憲となる。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都条例に基づく許可を得ず、あるいは許可…
事件番号: 昭和53(あ)1862 / 裁判年月日: 昭和54年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都集会示威運動等に関する条例における「だ行進」の禁止という許可条件は、その意義が不明確であるとはいえず、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和25年東京都条例第44号(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)に基づき許可された集団行進において、許可条件として付された「だ行進の…
事件番号: 昭和48(あ)2109 / 裁判年月日: 昭和50年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動に対し公安委員会の許可を要する条例であっても、不許可事由が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」に厳格に制限されており、原則として許可が義務付けられているのであれば、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:東京都条例第44号(東京都公安条例)は、集会、集団…