公安条例に関する原判決の憲法の解釈が原判決の結論に影響を及ぼすものでないとして憲法違反、判例違反の主張が不適法とされた事例(検事上告事件)―いわゆる政治的暴力行為防止法案反対の無許可デモ事件―
憲法21条
判旨
集団行動の無許可・条件違反を処罰する条例の適用は、当該行動が交通秩序阻害の程度を超え、著しく長時間の交通麻痺等の実害が発生する客観的な可能性を含み、公共の安寧に対し直接かつ具体的な危険をもたらすと認められる場合に合憲となる。
問題の所在(論点)
東京都条例(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)5条に基づく無許可または条件違反の処罰規定が、表現の自由(憲法21条1項)を侵害せず、どのような場合に合憲的に適用され得るか。
規範
集会・集団行進の自由(憲法21条1項)の制限が許容されるためには、単なる形式的な義務違反のみならず、当該行為が、秩序正しい平穏な集団行動に随伴する通常の交通阻害の程度を超え、著しい、かつ、長時間の交通麻痺等、大きな実害の現実的発生に発展する客観的可能性を含み、公共の安寧を保持するにつき直接かつ具体的な危険がもたらされることが明らかに認められなければならない(具体的危険性の基準)。
重要事実
被告人らは、東京都条例に基づく許可を得ず、あるいは許可条件に違反して、集団行進を指導した。その際、蛇行進、渦巻行進、座り込み、道路一杯を占拠するいわゆるフランスデモ等の行為が行われた。これらの行為は、単なる交通の不便にとどまらず、著しく長時間の交通麻痺を引き起こす可能性が高い状況であった。
あてはめ
本件における蛇行進や座り込み、フランスデモ等の態様は、平穏な集団行動に伴う不可避的な交通阻害の範囲を逸脱している。これらの行為は、大きな実害の現実的発生に発展する客観的可能性を含み、公共の安寧を保持するにつき「直接かつ具体的な危険」がもたらされると明らかに認められる。したがって、かかる具体的危険性のある行為を指導した被告人らに対し、条例を適用して処罰することは許容される。
事件番号: 昭和53(あ)1862 / 裁判年月日: 昭和54年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都集会示威運動等に関する条例における「だ行進」の禁止という許可条件は、その意義が不明確であるとはいえず、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和25年東京都条例第44号(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)に基づき許可された集団行進において、許可条件として付された「だ行進の…
結論
被告人らの各指導行為に対し、東京都条例5条を適用して有罪とした原判決の結論は正当であり、合憲である。
実務上の射程
本判決(徳島市民会館事件以前の基準を補完するもの)は、表現の自由の制限において「明白かつ現在の危険」の法理に近い「具体的危険性」の判断枠組みを示している。答案上は、集団示威行進の規制の合憲性を論じる際、単なる交通秩序の維持という目的だけでなく、具体的な危険の発生を要件とする限定解釈の根拠として活用すべきである。
事件番号: 昭和48(あ)2109 / 裁判年月日: 昭和50年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団行動に対し公安委員会の許可を要する条例であっても、不許可事由が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」に厳格に制限されており、原則として許可が義務付けられているのであれば、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:東京都条例第44号(東京都公安条例)は、集会、集団…
事件番号: 昭和35(あ)112 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 破棄差戻
昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は憲法第二一条に違反しない。
事件番号: 昭和48(あ)2464 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例の許可条件(だ行進の禁止)違反を処罰する規定は、公安委員会に条件の範囲を具体的に規定しているため、罰則の再委任には当たらず、表現の自由の不当な制限にもならない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条例に基づき、公安委員会から「だ行進(蛇行進)」を禁止する等の条件付許可を得て集団…
事件番号: 昭和46(あ)729 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: 破棄差戻
被告人らが羽田空港ターミナルビルデイング内国際線出発ロビーにおける参加者約三〇〇名の集団示威運動を指導した場合につき、被告人らの右行為は可罰的違法性を欠き昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪は成立しないとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものである。