所論の金融機関から捜査官への捜査関係事項の照会に対する回答書は刑訴法三二三条三号にいう「特に信用すべき情況の下に作成された書面」にあたるものと認められる。
金融機関の捜査関係事項照会に対する回答書の証拠能力
刑訴法323条3号
判旨
金融機関が捜査機関からの捜査関係事項照会(刑訴法197条2項)に対して回答した書面は、刑事訴訟法323条3号にいう「特に信用すべき情況の下に作成された書面」に該当する。
問題の所在(論点)
金融機関が捜査機関の捜査関係事項照会に応じて作成した回答書について、刑事訴訟法323条3号の伝聞例外としての証拠能力が認められるか。
規範
刑事訴訟法323条3号にいう「特に信用すべき情況の下に作成された書面」とは、同条1号および2号の書面と同程度に、作成の過程や性質において高度の客観的信用性が担保されている書面を指す。金融機関が公的な捜査照会に応じて作成・提供する回答書は、その業務上の記録に基づき客観的に作成されることから、同号の要件を満たすと解される。
重要事実
捜査機関が金融機関に対し、刑事訴訟法197条2項に基づき捜査関係事項の照会を行った。これに対し、金融機関は回答書を作成して提出した。刑事裁判において、当該回答書の証拠能力が争われ、特に伝聞例外として同法323条3号の書面に該当するか否かが問題となった。
事件番号: 昭和45(あ)1473 / 裁判年月日: 昭和46年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公正証書原本不実記載罪において、申請書類に登記義務者の委任状を欠く等の形式的瑕疵があっても、登記官がこれを看過して受理し、実体関係のない不実の記載がなされた以上、同罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、虚偽の仮登記申請を行うにあたり、本来必要とされる登記義務者Aの委任状を添付せず、代わりに登…
あてはめ
金融機関による照会回答書は、個別の刑事事件の捜査という特定の目的のために作成される側面はある。しかし、金融機関は日常的な業務記録を管理しており、照会への回答はその正確な記録に依拠して行われることが期待される。本件の回答書についても、その作成過程において虚偽が混入するおそれが少なく、特信情況が認められる。したがって、同法323条3号にいう「特に信用すべき情況の下に作成された書面」にあたると判断される。
結論
金融機関から捜査官への捜査関係事項照会に対する回答書は、刑訴法323条3号の書面に該当し、証拠能力が認められる。
実務上の射程
本判決は、金融機関の回答書の証拠能力を広く肯定する根拠として実務上定着している。答案上は、伝聞法則の例外(323条3号)を検討する際、作成の正確性が客観的に担保されていることを理由として、本判例を引用しつつ肯定的に論じることが一般的である。ただし、個別の事実関係において作成過程に疑義がある場合は、特信情況の有無を慎重に判断する必要がある。
事件番号: 昭和45(あ)471 / 裁判年月日: 昭和47年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の検察官に対する供述調書の任意性を肯定した原審の判断が相当であるとした事案である。 第1 事案の概要:被告人Aが検察官に対して行った供述調書について、その任意性が争点となった。弁護人は、当該供述調書には任意性がない旨を主張して上告したが、原審は記録を精査した上で、任意性を疑うべき点はないと判…
事件番号: 昭和42(あ)2188 / 裁判年月日: 昭和43年2月8日 / 結論: 棄却
刑訴法第三二六条第一項の同意のあつたポリグラフ検査結果回答書は、その検査結果が検査者の技術経験、検査器具の性能に徴して信頼できるものであり、かつ、検査の経過および結果を忠実に記載したものであるとき(原判文参照)は、証拠能力がある。
事件番号: 昭和25(れ)1426 / 裁判年月日: 昭和25年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜査報告書に添付された一覧表が独立した証拠書類に当たらない場合であっても、被告人が公判廷においてその記載内容を引用して自らの供述内容としたときは、当該一覧表を被告人の供述内容を明確にするための資料として判決に引用することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は詐欺罪で起訴された。原審において、司…
事件番号: 昭和27(あ)6836 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: 破棄差戻
第一審判決の確定した事実は「…(判決参照)…」というのである。しかし、本件記録に徴すれば、Aが、被告人のBに対する前記第五六一九一号公正証書による貸金債権六五〇〇〇円の譲渡契約を被告人との間に締結したのは、Aにおいて、右貸金債権が未だ消滅せず尚存在するものと信じたが故か、或は被告人において右公正証書の執行正本を入手し得…