一 昭和二七年徳島市条例第三号集団行進及び集団示威運動に関する条例三条三号が集団行進等についての遵守事項の一として、「交通秩序を維持すること」を掲げているのは、道路における集団行進が一般的に秩序正しく平穏に行われる場合はこれに随伴する交通秩序阻害の程度を超えた、殊更な交通秩序の阻害をもたらすような行為を避止すべきことを命じているものと解され、このように解釈した場合、右規定は右条例五条の犯罪構成要件の内容をなすものとして憲法三一条に違反するような不明確性を有するものではない。 二 道路交通法七七条一項四号は、その対象となる道路の特別使用行為等につき、各普通地方公共団体が、条例により地方公共の安寧と秩序の維持のための規制を施すにあたり、その一環として、これらの行為に対し、道路交通法による規制とは別個に、交通秩序維持の見地から一定の規制を施すことを排斥する趣旨を含むものではなく、昭和二七年徳島市条例第三号集団行進及び集団示威運動に関する条例三条三号の規制と道路交通法七七条及びこれに基づく徳島県道路交通施行細則による規制が一部重複しても、道路交通法による規制は条例の規制の及ばない範囲においてのみ適用されるものと解すべく、右条例三条三号、五条の規定が道路交通法七七条一項四号、三項、一一九条一項一三号、徳島県道路交通施行細則一一条三号に違反するものではない。
一 昭和二七年徳島市条例第三号集団行進及び集団示威運動に関する条例三条三号の「交通秩序を維持すること」の意義とその犯罪構成要件としての明確性 二 昭和二七年徳島市条例第三号集団行進及び集団示威運動に関する条例三条三号、五条と道路交通法七七条一項四号、三項、一一九条一項一三号、徳島県道路交通施行細則一一条三号との関係
昭和27年徳島市条例3号(集団行進及び集団示威運動に関する条例)3条3号,昭和27年徳島市条例3号(集団行進及び集団示威運動に関する条例)5条,憲法31条,道路交通法77条1項4号,道路交通法77条3項,道路交通法119条1項13号,徳島県道路交通施行細則(昭和47年徳島県公安委員会規則1号による改正前のもの)11条3号
判旨
「交通秩序を維持すること」という条例の規定は、通常の集団行進に伴う程度を超えた殊更な交通阻害を避止すべき趣旨と解され、罪刑法定主義(憲法31条)に反しない。また、条例による独自の交通規制は道路交通法と重複しても同法に違反せず、有効である。
問題の所在(論点)
①「交通秩序を維持すること」という条例の規定は、内容が不明確であり憲法31条に違反するか。 ②道路交通法により「だ行進」が規制されている場合、条例で重ねて交通秩序維持の義務を課し、処罰することは許されるか。
規範
事件番号: 昭和47(あ)2146 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)四条三項による許可条件の付与は、現に切迫した公衆に対する危害を防止するためばかりでなく、公衆に対する危害を予防するため公衆に対する危害に発展する可能性のある行為を禁止、制限する場合にも許される。 二 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)…
刑罰法規が憲法31条にいう明確性の原則に反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめる基準が読み取れるかどうかにより決すべきである。また、条例が国の法令と重複する規制を定める場合でも、直ちに当該法令に違反するものではなく、条例の目的・内容が法令の趣旨を排斥しない限り、適法に併存し得る。
重要事実
被告人は、徳島市内で開催された約1000名のデモ行進に参加し、隊列の外から携帯マイクで「わっしょい」等と叫び、行進者が道路幅いっぱいに「だ行進」をするよう扇動した。これが徳島市公安条例3条3号(交通秩序の維持)違反を構成するとして起訴されたが、一審・二審は、同条項が抽象的で不明確であり憲法31条に違反するとして、同罪について無罪を言い渡したため、検察官が上告した。
あてはめ
①「交通秩序を維持すること」との文言は、集団行進に伴い通常発生する交通阻害を超えた、殊更な秩序阻害を避けるべき趣旨と合理的に解釈可能である。よって、一般人にとっても何が禁止されているかの判断基準が示されており、不明確とはいえない。 ②道路交通法は道路の安全と円滑を目的とするが、地方公共団体が安寧秩序維持の見地から条例で別個の規制を施すことを排斥していない。したがって、条例の規制が道路交通法と重複していても、法が条例の規制を及ぼさない範囲でのみ適用されると解すべきであり、法に違反するものではない。
結論
本件条例の規定は憲法31条に違反せず、かつ道路交通法にも違反しないため有効である。被告人の扇動行為には本条例違反が成立する。
実務上の射程
憲法上の「明確性の原則」の判断基準(一般人の基準)と、条例と法律の競合(徳島市公安条例事件の法理)を示すリーディングケース。答案では、抽象的な構成要件の合憲性を論じる際や、法律がある分野での条例による独自の上乗せ・横出し規制の有効性を論じる際に引用する。
事件番号: 昭和46(あ)499 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
一 行進又は集団示威運動に関する条例(昭和二四年愛知県条例第三〇号)四条三項に基づき公安委員会が条件を付するについては、その条件が集団行動による思想の表現それ自体を事実上制約する結果となる場合でない限り、集団行動自体を不許可にするための要件が存在することを必要としない。 二 集団行動につき公安委員会が付した許可条件に違…
事件番号: 昭和50(あ)1095 / 裁判年月日: 昭和51年4月8日 / 結論: 棄却
昭和二三年大阪市条例第七七号行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法二一条に違反しない。
事件番号: 昭和37(あ)2663 / 裁判年月日: 昭和38年12月6日 / 結論: 棄却
昭和二四年愛知県条例第三〇号(行進又は集団示威運動に関する条例)第五条等が憲法第二一条、第一三条に違反するものでないことは、当裁判所の判例の趣旨に徴し明らかである(昭和二六年(あ)第三一八八号同二九年一一月二四日大法廷判決、刑集八巻一一号一八六六頁・昭和二八年(あ)第四八四一号同三五年七月二〇日大法廷判決、刑集一四巻九…
事件番号: 昭和46(あ)689 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一 だ行進やすわり込みは、集団行動による思想の表現のために不可欠のものではなく、これを禁止しても、思想表現行為としての集団行動の本質的意義と価値を失わしめ憲法上保障される表現の自由を不当に制限することにならないから、このような条件に違反したもののうちどの範囲のものを処罰するかは立法政策の問題にすぎない。 二 行進又は集…