昭和二三年大阪市条例第七七号行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法二一条に違反しない。
昭和二三年大阪市条例第七七号行進及び集団示威運動に関する条例と憲法二一条
憲法21条,行進及び集団示威運動に関する条例(昭和23年大阪市条例77号)
判旨
集団示威運動等の許可に際し、公衆に迷惑を及ぼす「フランス式デモ」等を禁止する条件を付すことは、公共の福祉に基づく合理的な制限として憲法21条に違反せず、その明確性も肯定される。
問題の所在(論点)
1. 公安条例や道路交通法に基づき「フランス式デモ」を禁止する条件を付すことが、憲法21条(表現の自由)に違反しないか。 2. 「フランス式デモ」等の条件が、構成要件の明確性を欠き、憲法31条に違反しないか。
規範
集団示威運動は、表現の自由(憲法21条)として保障されるが、公共の安寧秩序を維持するため、合理的かつ必要最小限度の範囲内で制限を受ける。特に「フランス式デモ」のような、公衆との摩擦を生じ危害に発展する可能性のある特定の表現態様については、一般公衆を保護するため、定型的行為として制限・禁止することが許容される。また、かかる禁止条件が、具体的な行為態様を指し示す定型的なものである限り、明確性の原則(憲法31条)にも反しない。
重要事実
被告人は、大阪市内で集団示威運動を行った際、大阪府公安委員会から「いわゆるフランス式デモ(蛇行進等)など、一般公衆に対し、迷惑を及ぼすような行為をしないこと」という条件を付された。被告人は、この条件に違反してフランス式デモを行い、道路交通法77条に基づく道路使用許可条件違反(同法119条1項13号)および大阪市条例違反に問われた。これに対し被告人側は、当該条件が表現の自由を侵害し、かつ内容が不明確であるとして違憲を主張した。
事件番号: 昭和47(あ)1401 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: 破棄差戻
被告人が、公安委員会が付した許可条件に違反して、大阪市内の交通ひんぱんな交差点において約六〇名の者とともに約二、三分間ジグザグ行進をした場合につき、被告人の右行為は可罰的違法性を欠き昭和二三年大阪市条例第七七号行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪は成立しないとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものである。
あてはめ
いわゆるフランス式デモは、その性質上、公衆との間に摩擦を生じさせ、一般公衆に対する危害に発展する具体的可能性がある。本件の「フランス式デモをしない」との条件は、群集の無秩序や暴行から公衆を保護するという正当な目的のための制限といえる。また、フランス式デモは実務上定着した定型的行為を指し、その禁止範囲は明確である。被告人は本件行為が当該条件により禁止されていることを認識していたことから、適正手続上の問題も生じない。さらに、かかる行為は通常の交通秩序阻害の程度を超えて「殊更な阻害」をもたらすものであるため、道路交通法による処罰も合憲である。
結論
フランス式デモを禁止する条件を付して集団示威運動を制限し、違反者を処罰することは憲法21条、31条に違反しない。
実務上の射程
本判決は徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10)の枠組みを維持し、表現の「内容」ではなく「時・所・方法」という表現態様の制約として判断している。答案上は、集団行進における条件付許可の合憲性や、道路使用許可条件違反の適法性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和47(あ)2146 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)四条三項による許可条件の付与は、現に切迫した公衆に対する危害を防止するためばかりでなく、公衆に対する危害を予防するため公衆に対する危害に発展する可能性のある行為を禁止、制限する場合にも許される。 二 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)…
事件番号: 昭和46(あ)499 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
一 行進又は集団示威運動に関する条例(昭和二四年愛知県条例第三〇号)四条三項に基づき公安委員会が条件を付するについては、その条件が集団行動による思想の表現それ自体を事実上制約する結果となる場合でない限り、集団行動自体を不許可にするための要件が存在することを必要としない。 二 集団行動につき公安委員会が付した許可条件に違…
事件番号: 昭和48(あ)2464 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】東京都公安条例の許可条件(だ行進の禁止)違反を処罰する規定は、公安委員会に条件の範囲を具体的に規定しているため、罰則の再委任には当たらず、表現の自由の不当な制限にもならない。 第1 事案の概要:被告人らは、東京都公安条例に基づき、公安委員会から「だ行進(蛇行進)」を禁止する等の条件付許可を得て集団…
事件番号: 昭和28(あ)4841 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 棄却
昭和二五年広島市条例第三二号集団行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法第二一条、第一一条、第一三条に違反しない。