被告人が、公安委員会が付した許可条件に違反して、大阪市内の交通ひんぱんな交差点において約六〇名の者とともに約二、三分間ジグザグ行進をした場合につき、被告人の右行為は可罰的違法性を欠き昭和二三年大阪市条例第七七号行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪は成立しないとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものである。
許可条件違反のジグザグ行進につき可罰的違法性を欠くとして昭和二三年大阪市条例第七七号行進及び集団示威運動に関する条例五条の罪の成立を否定した原判決が法令の解釈適用を誤つたものとされた事例
行進及び集団示威運動に関する条例(昭和23年大阪市条例77号)4条3項,行進及び集団示威運動に関する条例(昭和23年大阪市条例77号)5条,刑法35条,刑訴法411条1号
判旨
集団示威行進における道路使用許可条件違反のジグザグ行進は、それ自体が思想表現のために不可欠なものではなく、これを処罰の対象としても表現の自由を不当に制限するものとはいえない。したがって、ジグザグ行進が行われた以上、特段の事情がない限り実質的違法性を欠くとは認められず、可罰的違法性を否定して無罪とした原判決には法令解釈の誤りがある。
問題の所在(論点)
大阪市行進及び集団示威運動に関する条例に定める許可条件に違反した「ジグザグ行進」について、表現の自由(憲法21条1項)との関係で可罰的違法性が否定されるか。
規範
集団示威行進等の集団行動は表現の一態様として憲法上保障されるべき要素を有する。しかし、ジグザグ行進のような行為は思想の表現のために不可欠なものではなく、これを禁止・処罰しても憲法上の表現の自由を不当に制限することにはならない。したがって、許可条件に違反して行われたジグザグ行進は、それ自体が実質的違法性を有し、特段の事情がない限り可罰的違法性を欠くものとは解されない。
重要事実
事件番号: 昭和50(あ)1095 / 裁判年月日: 昭和51年4月8日 / 結論: 棄却
昭和二三年大阪市条例第七七号行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法二一条に違反しない。
被告人は、大阪市内の交通頻繁な交差点において、道路使用許可条件である「ジグザグ行進などの迷惑行為をしないこと」に反し、約60名とともに2、3分間にわたりジグザグ行進を行った。原審は、行進の規模が比較的小さく穏やかであったこと、交通秩序への著しい障害がなかったこと、表現の自由の保障を考慮し、可罰的違法性がないとして無罪とした。しかし、実際には警察官による信号機の手動切り替えや規制、警告によって秩序が維持されていた側面があった。
あてはめ
本件ジグザグ行進は、公安委員会が公衆の保護のために付した「平穏に秩序正しく行う」との条件に明示的に違反するものである。表現の自由による保障があるとしても、ジグザグ行進自体は表現に不可欠な手段ではない。また、原審が認定した「交通秩序への障害がなかった」という点は、警察官の適切な規制や信号操作の結果として平穏が保たれたに過ぎない。このような状況下での条件違反行為を、直ちに「社会通念上刑罰を加えるほどではない」として実質的違法性を否定することは、条例の解釈適用を誤るものである。
結論
被告人の行為には実質的違法性が認められ、可罰的違法性がないとした原判決は破棄を免れない。事件を差し戻す。
実務上の射程
本判決は、表現の自由の保障下にある集団行動であっても、その「方法」が表現に不可欠でない場合には、法益侵害の危険が具体化する前であっても条件違反そのものの違法性を肯定する姿勢を示している。答案上は、可罰的違法性の議論において「表現の自由の重要性」を考慮しつつも、公衆の安全や交通秩序維持という目的との比較衡量で、逸脱した態様の違法性を厳格に認める際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4841 / 裁判年月日: 昭和35年7月20日 / 結論: 棄却
昭和二五年広島市条例第三二号集団行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法第二一条、第一一条、第一三条に違反しない。
事件番号: 昭和47(あ)2146 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)四条三項による許可条件の付与は、現に切迫した公衆に対する危害を防止するためばかりでなく、公衆に対する危害を予防するため公衆に対する危害に発展する可能性のある行為を禁止、制限する場合にも許される。 二 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)…
事件番号: 昭和46(あ)499 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
一 行進又は集団示威運動に関する条例(昭和二四年愛知県条例第三〇号)四条三項に基づき公安委員会が条件を付するについては、その条件が集団行動による思想の表現それ自体を事実上制約する結果となる場合でない限り、集団行動自体を不許可にするための要件が存在することを必要としない。 二 集団行動につき公安委員会が付した許可条件に違…
事件番号: 昭和46(あ)1176 / 裁判年月日: 昭和50年9月10日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二七年徳島市条例第三号集団行進及び集団示威運動に関する条例三条三号が集団行進等についての遵守事項の一として、「交通秩序を維持すること」を掲げているのは、道路における集団行進が一般的に秩序正しく平穏に行われる場合はこれに随伴する交通秩序阻害の程度を超えた、殊更な交通秩序の阻害をもたらすような行為を避止すべきことを…