構成要件にあたる数個の事実が、包括一罪であるか、それとも併合罪であるかの判断は、判決書に罪となるべき事実として判示された事実をもとにしてなすべきものであつて、それ以外の別の事実をもとにしてなすべきものではない(判文参照)。
包括一罪と併合罪とを判別する基準となる事実
刑法45条
判旨
数個の拳銃所持の事実について、所持期間が重複し同一場所における同一態様の所持を含んでいるとしても、判決書に別個の事実として掲げられた複数の所持行為を包括一罪と解することは、罪数の解釈適用を誤ったものというべきである。
問題の所在(論点)
種類・日時・場所を異にする複数の拳銃所持の事実が、認定された事実関係に基づき包括一罪として評価されるべきか、それとも併合罪となるべきか。
規範
構成要件にあたる数個の事実が包括一罪か併合罪かの判断は、判決書に「罪となるべき事実」として判示された事実をもとにして決すべきである。判旨によれば、所持期間の重複や場所・態様の同一性がある場合であっても、個別の所持事実が独立して認定されている限り、これらを当然に包括して一罪と評価することはできない。
重要事実
被告人は、昭和39年2月から昭和40年4月にかけて、場所(渋谷区、中野区、台東区等)や種類(コルト25口径、ベレッタ25口径、コルト22口径、ロスコ22口径)を異にする4丁の拳銃を順次、または時期を重複して所持した。原審は、これらの所持が同一場所かつ同一態様を含み、被告人の所持が実質的に継続していたとして、4件の所持事実を包括して一罪と判断した。
事件番号: 昭和43(あ)1566 / 裁判年月日: 昭和43年12月19日 / 結論: 棄却
昭和四〇年法律第四七号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法のもとにおいて、法定の除外事由がないのに銃数挺および実包数十発を自宅内の一カ所において所持した場合には、銃数挺の不法所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括一罪を、実包数十発の不法所持の点は火薬類取締法違反罪をそれぞれ構成し、両者は、一個の行為で数個の罪名に触…
あてはめ
判旨は、原審が第一審の認定した「第一」から「第四」までの個別の所持事実をそのまま引用している点に着目する。原審は、所持期間が重複し、同一場所・同一態様の所持を含むことを理由に全体を包括一罪としたが、これは判決書に摘示された個別の犯罪事実の形式に反する。すなわち、個別に特定された複数の所持行為は、事実上継続していたとしても、罪数の計算上は併合罪として処理すべき事案であったといえる。
結論
原審が包括一罪とした判断は法令の解釈適用の誤りであるが、被告人のみの上告事件においては、不利益変更禁止の原則等に鑑み、直ちに職権をもって破棄(刑訴法411条適用)すべきものとは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
答案上では、銃刀法違反(所持)の罪数について、所持の継続性のみならず、客体の数や場所・時期の特定状況に応じて併合罪となりうることを示す論拠となる。特に、判決書での事実摘示の仕方が罪数判断の基準となる点を明示した実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和42(あ)2379 / 裁判年月日: 昭和43年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない事実誤認は、上告理由や破棄事由にはならない。被告人が所持していた拳銃の挺数に関する軽微な認定誤りは、結論として被告人の処断に影響しない限り、判決の違法とは認められない。 第1 事案の概要:被告人BおよびCは、拳銃の不法所持の罪に問われた。原判決は、昭和38年11月24日に特定…
事件番号: 昭和24(れ)1759 / 裁判年月日: 昭和25年1月10日 / 結論: 棄却
論旨は、審理の冒頭における概括的な犯罪事実の承認によつて、犯罪事實の内容に亘り全部を認めたものとすることはできないと主張するなるほど、被告人が概括的の問答では犯罪事實を認めても、個々の點についてはこれに反する供述をしたような場合には、冒頭の答えだけで細部に亘る悉くの事實を認めたものとは云い難いこともあらう。しかしその何…
事件番号: 昭和50(あ)1702 / 裁判年月日: 昭和50年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が以前に有罪判決を受けた拳銃所持の事実と、本件で起訴された拳銃所持の事実は、別個の拳銃に係るものである限り「同一の事実」とは認められず、一事不再理の効力は及ばない。 第1 事案の概要:被告人は以前、回転式改造拳銃1丁等の所持により松山地方裁判所で有罪判決を受けていた。その後、被告人は別の改造…
事件番号: 昭和38(あ)546 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
日本刀不法所持罪はその不法所持自体によつて成立し、日本刀を誇示して脅迫する暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪とは犯罪構成要件を異にし、被害法益も異つているから、第一審判決が同判示第二において認定する日本刀の不法所持が、同判示第一のこれを誇示してなした脅迫のためのものであつて、誇示した間は、誇示即ち所持の関係にあつても、…