昭和四〇年法律第四七号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法のもとにおいて、法定の除外事由がないのに銃数挺および実包数十発を自宅内の一カ所において所持した場合には、銃数挺の不法所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括一罪を、実包数十発の不法所持の点は火薬類取締法違反罪をそれぞれ構成し、両者は、一個の行為で数個の罪名に触れる場合に該当する。
銃数挺の所持が包括一罪にあたりこれと実包数十発の所持とが一所為数法の関係にあるとされた事例
昭和40年法律47号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法3条1項(各号省略),昭和40年法律47号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法31条1号,銃砲刀剣類所持等取締法3条1項(各号省略),銃砲刀剣類所持等取締法31条の21号,銃砲刀剣類所持等取締法31条の31号,火薬類取締法21条(各号省略),火薬類取締法59条2号,刑法45条,刑法54条1項
判旨
複数の拳銃および実包を同一場所で所持した場合、拳銃の所持は銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括一罪を、実包の所持は火薬類取締法違反を構成し、両者は観念的競合となる。
問題の所在(論点)
同一場所で複数の拳銃と実包を所持した場合の罪数関係が問題となる。特に、銃砲ごとの個別の罪が成立するのか(併合罪)、あるいは包括一罪となるのか。また、銃砲所持罪と実包所持罪との関係が観念的競合になるか否かが論点である。
規範
同一の場所において、複数の銃砲を収納して所持する行為は包括して一罪(銃砲刀剣類等所持取締法違反)を構成する。また、それらと同時に弾丸実包を所持する行為は別罪(火薬類取締法違反)を構成するが、それらが一個の保持行為に基づいている場合には、刑法54条1項前段の「一個の行為が数個の罪名に触れるとき」に該当し、観念的競合となる。
重要事実
被告人は、自宅事務所の同一箇所において、拳銃4挺および弾丸実包約33発を収納して所持していた。第1審判決は、拳銃1挺ごとに1個の所持罪が成立し、各銃砲所持罪および実包所持罪はすべて併合罪(刑法45条)の関係にあると判断していた。
事件番号: 昭和40(あ)2167 / 裁判年月日: 昭和41年4月7日 / 結論: 棄却
原判決およびその是認する第一審判決が、第一審判示第四の拳銃二丁の所持につき銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括罪に、実砲の所持につき火薬類取締法違反の罪に問擬し、両者を一個の行為にして数個の罪名にふれるものであるとした判示は正当である。
あてはめ
本件では、拳銃4挺が自宅事務所の「一カ所に収納」されていた。このように同一の場所で一括して管理・保持されている以上、拳銃の所持については個別の挺数ごとに罪が成立するのではなく、社会通念上一個の保持行為として包括一罪を構成すると評価される。また、同時に同じ場所でなされた弾丸実包の所持についても、実体的には拳銃の保持と重なる一個の行為によって行われているといえる。したがって、これら異種の罪名の間には観念的競合を認めるのが妥当である。
結論
拳銃4挺の不法所持は包括一罪を、実包の不法所持は火薬類取締法違反罪を構成し、両者は観念的競合の関係に立つ。
実務上の射程
同一場所での複数銃器等の所持が「一個の保持行為」といえる場合の罪数処理の基準。原判決の併合罪とする判断は法令適用誤りであるが、処断刑の範囲に変更がない限り、直ちに上告理由(刑訴法411条)にはならないとする実務的運用も示している。
事件番号: 昭和44(あ)1769 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
構成要件にあたる数個の事実が、包括一罪であるか、それとも併合罪であるかの判断は、判決書に罪となるべき事実として判示された事実をもとにしてなすべきものであつて、それ以外の別の事実をもとにしてなすべきものではない(判文参照)。
事件番号: 昭和34(あ)1880 / 裁判年月日: 昭和35年3月17日 / 結論: 棄却
同一事件につき同一人を蔵匿し、かつ、隠避させたときは包括一罪として処断すべく、また、同一事件であつても、数人の犯人を一個の行為で蔵匿しまたは隠避させたときは、一個の行為で数個の罪名に触れるものと解すべきである。
事件番号: 昭和42(あ)130 / 裁判年月日: 昭和42年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締法違反と火薬類取締法違反が観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その旨の適用を欠いても、結果として重い方の罪の刑で処断していれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲刀剣類等所持取締法違反および火薬類取締法違反の罪に問われた。第一審…
事件番号: 昭和50(あ)1702 / 裁判年月日: 昭和50年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が以前に有罪判決を受けた拳銃所持の事実と、本件で起訴された拳銃所持の事実は、別個の拳銃に係るものである限り「同一の事実」とは認められず、一事不再理の効力は及ばない。 第1 事案の概要:被告人は以前、回転式改造拳銃1丁等の所持により松山地方裁判所で有罪判決を受けていた。その後、被告人は別の改造…