同一事件につき同一人を蔵匿し、かつ、隠避させたときは包括一罪として処断すべく、また、同一事件であつても、数人の犯人を一個の行為で蔵匿しまたは隠避させたときは、一個の行為で数個の罪名に触れるものと解すべきである。
犯人蔵匿罪の罪数
刑法103条,刑法54条1項前段
判旨
同一人を蔵匿し、かつ、隠避させた場合は包括一罪となるが、一個の行為で数人の犯人を蔵匿・隠避させたときは、一個の行為が数個の罪名に触れるものとして観念的競合(刑法54条1項前段)となる。
問題の所在(論点)
犯人蔵匿・隠避罪(刑法103条)における罪数の決定基準。特に、同一人を蔵匿・隠避させた場合の処理と、一個の行為で数人の犯人を蔵匿・隠避させた場合の処理が問題となる。
規範
同一の被疑者・被告人を対象として蔵匿および隠避の行為がなされた場合は、包括して一個の犯人蔵匿・隠避罪を構成する。これに対し、一個の行為によって数人の犯人を対象として蔵匿または隠避の行為がなされた場合には、一個の行為が数個の罪名に触れるものとして観念的競合となる。
重要事実
被告人が、同一の機会において、特定の犯人を蔵匿し、かつ隠避させた。さらに、一個の行為をもって、同一事件に関与した数人の犯人を対象として蔵匿または隠避の行為を行った。原審は、同一人に対する複数の行為を包括一罪とし、数人に対する一個の行為を観念的競合として処理したため、上告人がその罪数の認定に違法があると主張して争った。
事件番号: 昭和40(あ)2167 / 裁判年月日: 昭和41年4月7日 / 結論: 棄却
原判決およびその是認する第一審判決が、第一審判示第四の拳銃二丁の所持につき銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括罪に、実砲の所持につき火薬類取締法違反の罪に問擬し、両者を一個の行為にして数個の罪名にふれるものであるとした判示は正当である。
あてはめ
本件において、同一人を蔵匿し、かつ隠避させた点については、犯人隠匿等の罪が国の刑事司法作用の阻害を罰するものであることに鑑み、同一の犯人に対する一連の阻害行為として包括して一罪と解される。他方、数人の犯人を一個の行為で蔵匿・隠避させた点については、対象となる犯人の数に応じて国家の刑事司法作用に対する侵害が複数生じているといえる。したがって、一個の身体的活動によって複数の法益侵害を惹起したものとして、刑法54条1項前段の「一個の行為にして数個の罪名に触れるとき」に該当すると評価される。
結論
同一人に対する蔵匿・隠避は包括一罪となる。一個の行為で数人を蔵匿・隠避させたときは、観念的競合となる。
実務上の射程
犯人蔵匿・隠避罪の罪数判断におけるリーディングケースである。答案作成上は、客体の数(犯人の数)に着目し、行為が一個であれば観念的競合、行為が別個であれば併合罪として処理する指針となる。また、同一人に対する複数の態様(蔵匿と隠避)については包括一罪として処理することを明示する際に用いる。
事件番号: 昭和41(あ)1354 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 棄却
一 密輸拳銃故買(関税法第一一二条第一項)の罪と同一拳銃の不法所持(銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項違反)の罪とは、観念的競合の関係に立たない。 二 刑法総則の規定である同法第四五条前段、第四八条第一項のような規定は、これを適用した趣旨であることが、原判決自体から明らかに認められる以上、その適用をあえて掲げてなくても…
事件番号: 昭和43(あ)1566 / 裁判年月日: 昭和43年12月19日 / 結論: 棄却
昭和四〇年法律第四七号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法のもとにおいて、法定の除外事由がないのに銃数挺および実包数十発を自宅内の一カ所において所持した場合には、銃数挺の不法所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括一罪を、実包数十発の不法所持の点は火薬類取締法違反罪をそれぞれ構成し、両者は、一個の行為で数個の罪名に触…
事件番号: 昭和42(あ)130 / 裁判年月日: 昭和42年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締法違反と火薬類取締法違反が観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その旨の適用を欠いても、結果として重い方の罪の刑で処断していれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲刀剣類等所持取締法違反および火薬類取締法違反の罪に問われた。第一審…
事件番号: 昭和44(あ)1769 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
構成要件にあたる数個の事実が、包括一罪であるか、それとも併合罪であるかの判断は、判決書に罪となるべき事実として判示された事実をもとにしてなすべきものであつて、それ以外の別の事実をもとにしてなすべきものではない(判文参照)。