判旨
判決に影響を及ぼさない事実誤認は、上告理由や破棄事由にはならない。被告人が所持していた拳銃の挺数に関する軽微な認定誤りは、結論として被告人の処断に影響しない限り、判決の違法とは認められない。
問題の所在(論点)
原判決が認定した事実(搬入された拳銃の挺数)に誤りがある場合、それが直ちに判決に影響を及ぼす違法として破棄事由になるか。刑訴法405条の適用範囲が問題となる。
規範
刑事訴訟法405条等の上告理由において、原判決に事実誤認が認められる場合であっても、その誤認が判決の結論(被告人の処断)に影響を及ぼさないことが明らかな場合には、上告を棄却すべきである。
重要事実
被告人BおよびCは、拳銃の不法所持の罪に問われた。原判決は、昭和38年11月24日に特定の事務所に搬入された拳銃を一六挺と認定したが、実際にはそれとは異なる挺数であった。しかし、第一審および原判決は、被告人Bについては十五挺の不法所持の事実を認定してこれを是認し、被告人Cについても同事実により処断していた。
あてはめ
記録によれば、事務所に搬入された拳銃が一六挺であるとの認定は誤りであるが、被告人Bについては一五挺の不法所持を認定した第一審判決が維持されている。また、被告人Cについても同様の事実に基づき処断されている。そうすると、搬入総数に関する認定の細かな差異は、被告人両名の犯罪成立や量刑の基礎となる「一五挺の所持」という核心的認定を左右するものではない。したがって、この誤認は判決の結論に影響を及ぼすものとはいえない。
結論
原判決に事実誤認の違法はあるものの、判決に影響を及ぼさないため、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(れ)945 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない事実誤認の主張や、同法411条を適用すべき顕著な正義に反する事由がない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:弁護人が、被告人の有罪判決に対して事実誤認を理由に上告を申し立てた事案。弁護人は、下級審の事実認定に誤りがあることを強く主張していた。 第2 問…
事実誤認を理由とする控訴・上告において、誤認の存在自体だけでなく、それが「判決に影響を及ぼすべき」ものであるかという因果関係の検討が必要であることを示す。特に数詞や細部の付随的事実の誤りは、犯罪の成否や量刑の枠組みを動かさない限り、救済の対象とならない実務上の基準を確認する際に用いる。
事件番号: 昭和44(あ)1769 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
構成要件にあたる数個の事実が、包括一罪であるか、それとも併合罪であるかの判断は、判決書に罪となるべき事実として判示された事実をもとにしてなすべきものであつて、それ以外の別の事実をもとにしてなすべきものではない(判文参照)。
事件番号: 昭和24(れ)1973 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
公判請求書の公訴事実に、被告人の自宅において隠匿所持したとあるのを、原判決摘示事實のように、自動車で運搬して所持したと認定しても、それは本件銃砲等不法所持の態様が異なつただけで基本たる事實に相違を來たしたのでないことは、右の公判請求書の公判事實と原判決摘示事實第一とを比照すればおのずから明らかである。よつて原判決には所…
事件番号: 昭和25(れ)1449 / 裁判年月日: 昭和26年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認を理由とする上告は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、弁護人が主張した上告趣意の内容は事実誤認を主張するものであった。 第2 問題の所在(論点):事実誤認の主張が、当時の刑事訴訟手続(刑事訴訟法応急措置法等)…
事件番号: 昭和25(あ)1035 / 裁判年月日: 昭和26年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認や量刑不当の主張について、刑事訴訟法411条に基づき職権で破棄しなければ著しく正義に反すると認められる事由がない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決に事実誤認および量刑不当があることを主張し、刑訴法411条に基づく破棄を求めた。また、独自の見解に基づき、憲…