新聞紙の編集発行をしている選挙運動者が、公職選挙法一四八条の二第一項の金銭供与の申込を承諾し、特定人の当選を得しめる目的で、その編集発行にかかる月刊新聞に、その地位を利用して、選挙に関する報道評論を掲載し、その報酬として、右金員の供与を受けたときは、同法一四八条の二第二項に違反する同法二二三条の二第一号の罪が成立し、同法一四八条の二第三項に違反する同法二三五条の二第三号の罪および同法二二一条一項三号、四号の罪が成立するものではない。
公職選挙法一四八条の二第二項に違反する同法二二三条の二第一号の罪が成立するとされた事例
公職選挙法148条の2第2項,公職選挙法148条の2第3項,公職選挙法221条1項3号,公職選挙法221条1項4号
判旨
新聞雑誌の編集者等が特定人の当選を目的として報酬を受け、選挙に関する報道・評論を掲載する行為を禁止する公職選挙法の規定は、選挙の公正を維持するための必要かつ合理的な制限であり、憲法21条に違反しない。
問題の所在(論点)
新聞雑誌の編集・経営上の地位にある者が、報酬を受け、かつ選挙に関し特定の候補者に有利な報道・評論を掲載することを禁じる公職選挙法の規定(148条の2)が、表現の自由を保障する憲法21条に違反しないか。
規範
公職選挙法148条の2第2項及び3項は、新聞雑誌の報道・評論が選挙人に及ぼす多大な影響力を鑑み、編集・経営上の地位にある者が特定人の選挙運動にこれを利用することで選挙の自由公正が害されることを防止する趣旨である。当該規制は、報道の真否や評論の当否、掲載動機の如何を問わず、公共の福祉のために許された必要かつ合理的な制限として、憲法21条の表現の自由を侵害しない。
重要事実
被告人Bは月刊新聞の経営・編集発行に従事していた。Bらは、市長選挙に立候補予定のAを当選させる目的で、立候補届出前の時期に、Aの業績を称え自民党の断念工作を批判する記事を掲載した。その際、被告人らは選挙運動の報酬として現金10万円の供与を受け、立候補届出前の選挙運動禁止に違反するとともに、新聞雑誌等の地位を利用した選挙運動の禁止(公職選挙法148条の2)に抵触するとして起訴された。
あてはめ
被告人らは新聞雑誌の編集発行という特殊な地位を利用し、報酬を得た上で、選挙人に影響を及ぼす内容の記事を掲載している。このような行為は、報道機関の公共的使命を逸脱し、特定人の選挙運動の手段として私的に利用されるものである。本件規定は、報道の真偽に関わらずその地位の悪用自体を封じることで、選挙の公明維持という重要な公共の利益を達成しようとするものであり、その目的と手段の妥当性は認められる。したがって、被告人らの行為を処罰することは、憲法21条の許容範囲内である。
結論
公職選挙法148条の2が定める新聞雑誌の地位利用等の制限は、憲法21条に違反せず、被告人らを処罰した原判決に違憲の疑いはない。
実務上の射程
選挙運動の自由と表現の自由の関係において、報道機関の「地位」が報酬等によって私物化される場合の制約の合憲性を認めた判例。答案上は、表現の自由を制約する目的の正当性と手段の合理性を検討する際の「公共の福祉」による制限の具体例として、公職選挙法の各禁止規定の合憲性を基礎付けるために引用できる。
事件番号: 昭和60(あ)590 / 裁判年月日: 平成元年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法148条2項括弧書の規定は、選挙の公正を確保するために、特定の時期かつ特定の態様に限って新聞等の頒布方法を規制するものであり、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、選挙運動の期間中または選挙当日に、無償で新聞紙又は雑誌を頒布した。これが公職選挙法148条2項括弧書(新聞…