一 公職選挙法二三五条の二第二号にいう選挙に関する「報道又は評論」とは、当該選挙に関する一切の報道・評論を指すのではなく、特定の候補者の得票について有利又は不利に働くおそれがある報道・評論をいう。 二 公職選挙法二三五条の二第二号の構成要件に形式的に該当する場合であつても、もしその新聞紙・雑誌が真に公正な報道・評論を掲載したものであれば、その行為の違法性は阻却される。 三 公職選挙法一四八条三項一号イの「新聞紙にあつては毎月三回以上」の部分は、憲法二一条、一四条に違反しない。
一 公職選挙法二三五条の二第二号にいう選挙に関する「報道又は評論」の意義 二 公職選挙法二三五条の二第二号違反の行為と違法性の阻却 三 公職選挙法一四八条三項一号イの「新聞紙にあつては毎月三回以上」の部分と憲法二一条、一四条
公職選挙法148条3項,公職選挙法235条の2第2号,刑法35条,憲法14条,憲法21条
判旨
公職選挙法148条3項の禁止する選挙に関する報道・評論とは、特定の候補者の得票に有利又は不利に働くおそれがあるものを指し、真に公正な報道・評論であれば刑法35条により違法性が阻却される。
問題の所在(論点)
公職選挙法148条3項(現235条の2第2号)が、一定の要件を満たさない新聞等の選挙報道を制限している点について、表現の自由(憲法21条)を侵害し違憲とならないか。また、処罰対象となる「報道又は評論」の範囲をどのように解釈すべきか。
規範
1. 公職選挙法235条の2第2号(旧148条3項)の「報道又は評論」とは、選挙に関する一切のものを指すのではなく、特定の候補者の得票について有利又は不利に働くおそれがあるものをいう。 2. 上記規定の構成要件に形式的に該当する場合であっても、当該新聞・雑誌が「真に公正な報道・評論」を掲載したものであるときは、正当業務行為(刑法35条)として違法性が阻却される。
重要事実
被告人は、公職選挙法上の法定要件(毎月3回以上の発行等)を充足しない新聞等を発行し、選挙に関する報道・評論を掲載したとして、同法148条3項違反(現235条の2第2号)に問われた。これに対し被告人側は、同条項が表現の自由を保障する憲法21条や法の下の平等を定める14条に違反し、かつ構成要件が不明確で憲法31条にも違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 立法趣旨の検討:本規定は、選挙目当ての新聞等が選挙の公正を害し、特定の候補者と結びつく弊害を除去して脱法行為を防止する点にある。この趣旨から、制限対象は「特定の候補者の得票に影響を及ぼすおそれがあるもの」に限定して解釈すべきである。 2. 違憲性の判断:本規定は公正な選挙確保のためにやむを得ない制限であり、限定解釈を施す限りにおいて憲法21条・14条・31条に違反しない。 3. 違法性阻却の予備的判断:仮に形式的要件に抵触しても、その内容が「真に公正な報道・評論」であれば、民主主義の根幹に関わる正当な業務として刑法35条により違法性が阻却される道が残されている。
結論
本規定は憲法21条、14条、31条に違反しない。被告人の行為が、特定の候補者に有利・不利な影響を及ぼすものであり、かつ真に公正な報道といえない場合には処罰を免れない。
実務上の射程
選挙運動の自由と公正な選挙の要請が衝突する場面において、実務上の処罰範囲を限定する解釈指針として機能する。特に、形式的に公選法の規制に抵触する場合でも、「真に公正な報道・評論」であれば刑法35条による違法性阻却を検討すべきとする点は、実務上の重要な抗弁となり得る。
事件番号: 昭和44(あ)2250 / 裁判年月日: 昭和45年3月25日 / 結論: 棄却
公職選挙法一四八条の二にいう「新聞紙」は、同法一四八条三項所定の要件を具備するものに限られない。