一 公職選挙法第一四八条の二第三項にいう「選挙に関する報道及び評論」とは、その報道の真否、評論の当否およびその動機の如何を問わない趣旨と解すべきである。 二 右公職選挙法の規定にいう「編集その他経営上の特殊の地位を利用して」ということは、文理上その意味は明らかであり、かつ冒頭に掲げられている目的との関係において自ら限界があつて、その概念があいまいであるとはいえない。 三 公職選挙法第一四八条の二第三項の規定は憲法第二一条第一項に違反しない。
一 公職選挙法第一四八条の二第三項にいう「選挙に関する報道及び評論」には真実の報道および正当な評論を含むか 二 公職選挙法第二三五条の二第三号の罪の構成要件たる同第一四八条の二第三項にいう「編集その他経営上の特殊な地位を利用して」ということは、概念が明確でないか 三 公職選挙法第一四八条の二第三項の規定は憲法第二一条第一項に違反するか
公職選挙法148条の2第3項,公職選挙法235条の2第3号,憲法31条,憲法21条1項
判旨
公職選挙法148条の2第3項による新聞等の編集上の地位を利用した選挙運動の制限は、選挙の自由公正を維持するための必要かつ合理的な制限であり、憲法21条1項及び31条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法148条の2第3項による、新聞・雑誌の編集者等の地位を利用した選挙運動の制限が、憲法21条1項(表現の自由)および憲法31条(適正手続・明確性の原則)に違反しないか。
規範
1. 新聞雑誌の報道・評論が編集等の特殊な地位を有する者によって特定候補者の当選妨害等のために利用される場合、選挙の自由公正を害するおそれがあるため、その報道内容の真偽や動機の如何を問わず規制できる。 2. 「編集その他経営上の特殊の地位を利用して」との規定は、文理上明確であり、その目的との関係から自ら限界があるため、明確性の原則に反しない。
重要事実
被告人は、一人で新聞を編集・発行する立場にあった。被告人は、特定の候補者Aを当選させない目的をもって、新聞編集人としての地位を利用し、当該新聞に特定の報道および評論を掲載した。第一審判決は、この行為を表現の自由の濫用と認め、公職選挙法148条の2第3項を適用した。
あてはめ
1. 被告人は一人で新聞を編集発行しており、その地位を利用することが容易な立場にあった。本件報道等は、単なる編集人としての身分ゆえに処罰されるのではなく、その地位を「利用」して当選妨害目的で行われたものである。 2. 報道内容の真否や当否にかかわらず、地位を利用した選挙介入を規制することは、公共の福祉による必要かつ合理的な制限の範囲内といえる。 3. 「地位を利用して」という文言は、特定の目的との関係で限定的に解釈可能であり、不明確とはいえない。
結論
公職選挙法148条の2第3項は憲法21条1項、31条に違反しない。被告人が編集人の地位を利用して当選妨害目的の報道を行った行為に同条を適用した判断は正当である。
実務上の射程
選挙の公明正大を確保するための「態様」に着目した規制として、表現の自由に対する合憲性の判断枠組みを示す。特に「地位の利用」という要件が身分による差別ではなく、具体的な行為の態様を制限するものであることを強調する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和43(あ)2053 / 裁判年月日: 昭和44年6月12日 / 結論: 棄却
新聞紙の編集発行をしている選挙運動者が、公職選挙法一四八条の二第一項の金銭供与の申込を承諾し、特定人の当選を得しめる目的で、その編集発行にかかる月刊新聞に、その地位を利用して、選挙に関する報道評論を掲載し、その報酬として、右金員の供与を受けたときは、同法一四八条の二第二項に違反する同法二二三条の二第一号の罪が成立し、同…