判旨
公共企業体等労働関係法17条1項に違反する争議行為であっても労働組合法1条2項が適用される余地があり、その正当性は手段の態様を含めて個別具体的に判断すべきである。また、第一審が事実を認定した上で法律判断により無罪とした場合、控訴審が事実取調べなしに自判して有罪としても刑訴法400条但書に反しない。
問題の所在(論点)
1.公共企業体職員による禁止された争議行為に労働組合法1条2項の正当性が認められる余地があるか。 2.第一審が事実認定をした上で法律判断により無罪とした事件について、控訴審が事実取調べをせずに有罪と自判することは許されるか。
規範
公共企業体等労働関係法17条1項により争議行為が禁止されている場合であっても、直ちに労働組合法1条2項の刑事免責の適用が否定されるものではない。争議行為の正当性は、目的が正当であることに加え、その手段たる行為の態様が社会通念上相当な範囲に留まっているか否かによって個別具体的に判断される。
重要事実
国鉄(当時)の労働組合員である被告人らが、いわゆる「順法闘争」の一環として複数の現場で争議行為(ピケッティング等)を行った。第一審は、被告人らの行為について事実認定を行った上で、法律上の見解から「罪にならない」として無罪を言い渡した。これに対し控訴審は、新たな事実取調べを行うことなく、第一審が認定した事実を前提として、その正当性を否定し自判により有罪とした。被告人側はこれが憲法28条違反および刑訴法400条但書の判例違反にあたるとして上告した。
あてはめ
本件における争議行為の目的は正当と認められる。しかし、手段の態様において、威力業務妨害罪を構成する程度の態様を呈しており、社会通念上相当な範囲を超えている。したがって、行為の態様上、労働組合法1条2項の正当性を欠く。また、第一審判決は証拠に基づき犯罪事実の存在自体は認定しており、法律の解釈適用上無罪としたに過ぎないため、控訴審がその事実認定を前提に法律判断を変更して有罪とすることは、書面審理のみによる事実認定を禁じた判例には抵触しない。
結論
本件争議行為には正当性が認められず、威力業務妨害罪が成立する。また、控訴審の自判手続に違法はない。
実務上の射程
労働刑法における正当性判断の枠組みを示す。特に公施設職員の争議行為であっても一律に免責を否定せず、手段の相当性を重視する。刑事訴訟実務においては、刑訴法400条但書の「事実の取調べ」が不要な範囲を画定する基準(事実認定の有無)として活用される。
事件番号: 昭和42(あ)2892 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項による争議行為の一切の禁止は、憲法28条に違反しない。また、同法が禁止する争議行為に対しては労働組合法1条2項の刑事免責規定は適用されない。 第1 事案の概要:本件は、公共企業体等の職員である被告人らが、同法17条1項により禁止されている争議行為(具体的な態様は判決…