公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた威力業務妨害行為が刑法上の違法性を欠くものではないとされた事例
公共企業体等労働関係法17条1項,刑法35条,刑法233条,刑法234条
判旨
公労法17条1項により争議行為を禁止されている公労法上の労働者には労組法1条2項が適用されず、正当な争議行為としての刑事免責は受けられない。威力を用いて列車の運行を妨害した行為が同条項に違反する場合、特段の違法性阻却事由がない限り、威力業務妨害罪が成立する。
問題の所在(論点)
公労法17条1項により争議行為が禁止されている公共企業体等の労働者に対し、労組法1条2項による刑事免責の規定が適用されるか。また、同条項に違反する争議行為について刑法上の違法性を阻却する余地があるか。
規範
公労法17条1項に違反する争議行為については、労組法1条2項の適用がない。したがって、当該行為が刑罰法規の構成要件に該当する場合、法秩序全体の見地からみてその違法性を否定すべき「特段の違法性阻却事由」が存在しない限り、刑法上の違法性が肯定される。その際、争議の目的の正当性や偶発性、実害の程度といった事情は犯情として考慮しうるにとどまる。
重要事実
国鉄(当時)の労働組合員である被告人らは、年度末手当の要求実現等を目的とし、駅構内の線路上に立ち塞がって列車の運行を阻止した。被告人らは約2時間にわたり、発車合図や運転業務を不能にさせ、威力を用いて列車運行業務を妨害した。第一審及び原審は、東京中郵事件判決の枠組みに基づき、公労法17条1項違反の行為でも労働基本権の制約は最小限であるべきとして刑事免責を認め、無罪としていた。
あてはめ
被告人らの行為は、威力を用いて国鉄の列車運行業務を妨害したものであり、刑法234条の威力業務妨害罪の構成要件に該当する。また、公労法17条1項に違反する争議行為であるため、労組法1条2項の適用は受けられない。原審が挙げた「目的の不当性の欠如」「当局側の責任」「過激な有形力行使の不在」「早朝による実害の限定」といった諸事情は、あくまで犯情(量刑上の事情)として考慮されるべき事実にすぎず、刑罰法規の違法性を根底から否定する「特段の違法性阻却事由」にはあたらない。
結論
被告人らの行為は威力業務妨害罪を構成し、違法性は阻却されない。原判決を破棄し、各被告人を罰金3万円に処する。
実務上の射程
名古屋中郵事件判決(最大判昭52.5.4)の流れを汲み、公労法(現・公労使法等)上の争議行為禁止の合憲性を前提に刑事免責を否定する実務上の立場を確定させた。答案上は、公務員や公労法上の労働者の争議行為が問われた際、労組法1条2項の適用を否定し、刑法総論上の違法性阻却事由の存否(特段の事情の有無)という枠組みで論じる際に用いる。
事件番号: 昭和45(あ)2373 / 裁判年月日: 昭和49年7月16日 / 結論: 棄却
被告人が、A労働組合組合員約一五〇名と共謀し、多数乗客を乗せて駅に入構した旅客列車の前方斬条上に共にスクラムを組んでうずくまるなどし、また乗務員をその腕を抱えるなどして強いて下車させ、これによつて午後八時ころから同八時四四分ころまでの間右列車の発進を不能ならしめた所為は、その目的が原認定(原判文参照)のとおりであり、右…
事件番号: 昭和45(あ)2199 / 裁判年月日: 昭和53年3月3日 / 結論: 破棄自判
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害及び不退去行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
事件番号: 昭和43(あ)1684 / 裁判年月日: 昭和45年7月21日 / 結論: 棄却
公共企業体等労働関係法一七条一項に違反してなされた争議行為についても、労働組合法一条二項の適用がある。