本件のように需要に比して供給数量の僅少な医薬品(ストレプトマイシン、ヂヒドロストレプトマイシン)の取引について、法による統制を加え、これに違反する者を処罰することが憲法第二五条の趣旨に反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二五年(あ)第二一〇六号同二六年一二月五日大法廷判決・刑集五巻一三号二四七一頁、同二三年(れ)第二八一号同二五年二月一日大法廷判決・刑集四巻二号八八頁)の趣旨に徴し明らかである。
物価統制令・臨時物資需給調整法による物資の価格及び需給に関する統制の合憲性
憲法25条,物価統制令3条,物価統制令9条ノ2,物価統制令33条,物価統制令34条,臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条
判旨
需要に比して供給が極めて少ない医薬品の取引に対し、法による統制を加え、違反者を処罰する規定は、生存権を規定する憲法25条の趣旨に反しない。
問題の所在(論点)
需要が供給を大幅に上回る重要な医薬品について、取引を法的に統制し違反者を処罰することは、憲法25条(生存権・国の社会的使命)の趣旨に反し違憲となるか。
規範
社会保障・公衆衛生の向上等を図るための経済的・福祉的規制において、物資の需給バランスが著しく均衡を欠く場合に、当該物資の流通を法的に統制し罰則を設けることは、公共の福祉の観点から憲法25条の趣旨に適合し、立法府の裁量の範囲内として許容される。
重要事実
被告人らは、需要に比して供給数量が僅少な医薬品の取引について、法令による統制に違反する行為を行った。これに対し、被告人側は、当該医薬品の取引制限および処罰規定が憲法25条の生存権を侵害するものであり、違憲であると主張して上告した。
事件番号: 昭和25(れ)1180 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
所論ゴム製品については、その統制額を指定した物価庁告示が既に廃止せられたことは所論のとおりであるけれども、右告示による統制指定の廃止は、本件のごとくその廃止以前に犯された物価統制令第三条違反の罪に対しては、旧刑訴第三六三所定の「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタトキ」に該らないとすることは、当裁判所判例(昭和二三年(れ)…
あてはめ
本件で対象となった医薬品は、需要に比して供給数量が極めて少ない性質を有する。このような物資の適正な分配を確保し、国民の生命・健康を保護するためには、自由な取引を制限する法的統制が必要不可欠といえる。過去の判例(食糧統制等に関する大判決)の趣旨に照らしても、限られた資源を管理・統制し、違反を処罰することは、生存権を実効的なものとするための合理的規制であると評価される。
結論
医薬品の取引統制および処罰規定は、憲法25条の趣旨に反するものではなく、合憲である。
実務上の射程
生存権を根拠とした経済・福祉的規制の違憲主張に対し、国の広範な立法裁量を認め、公共の福祉による制限を肯定する文脈で活用する。特に公衆衛生上の必要性が高い物資の規制の正当化に適している。
事件番号: 昭和26(あ)2735 / 裁判年月日: 昭和27年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は、国に対して国民一般の生活を保障すべき国政上の任務を課したものであり、個々の国民が国家に対して具体的・現実的な権利を直接取得することを認めたものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件における上告審において、憲法違反を主張した事案。弁護人は、憲法25条1項の法意に反する事態が…