被告人が、身体に道路交通法施行令第二七条に定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたことの認定は、必ずしも検知機その他特別のいわゆる科学的判定法によることを要せず、事故前の飲酒量および飲酒状況等の資料を総合してこれを認定し得る。
道路交通法施行令第二七条(昭和四〇年政令第二五八号による改正前のもの)の「酒気を帯びた場合のアルコールの程度」を認定するには、科学的判定によることを要するか
道路交通法65条,道路交通法117条の2第1号,道路交通法施行令27条(昭和40年政令258号による改正前のもの、現行26条の2)
判旨
酒気帯び運転の要件であるアルコール保有状態の認定は、必ずしも科学的判定法によることを要せず、飲酒状況等の諸資料を総合して認定することができる。
問題の所在(論点)
道路交通法上の酒気帯び運転の成立要件である「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態」の認定において、科学的判定法による数値の裏付けが不可欠か。また、飲酒量等の状況証拠による認定が可能か。
規範
道路交通法施行令27条に定める程度以上のアルコールを身体に保有する状態にあったか否かの認定については、必ずしも検知器その他特別のいわゆる科学的判定法によることを要しない。事故前の飲酒量および飲酒状況等の資料を総合して、実質的に当該基準値以上のアルコールを保有していたと認められる場合には、その事実を認定することができる。
重要事実
被告人は道路交通法違反(酒気帯び運転)等の罪に問われた。弁護側は、身体に政令で定める程度以上のアルコールを保有していたことの認定に際し、検知器等による科学的測定結果が欠けていることを理由に、事実誤認および法令違反がある旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和43(あ)2640 / 裁判年月日: 昭和44年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の酒酔い運転罪の成立には、呼気中のアルコール保有量のみならず、被告人の身体的・精神的状況等を総合して正常な運転ができないおそれがある状態であることの認識が必要である。 第1 事案の概要:被告人がアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転したとして、道路交通法…
あてはめ
本件において、原審は検知器による測定結果が存在しない場合であっても、被告人の事故前の飲酒量や飲酒時の具体的な状況といった客観的資料を総合的に検討している。このような飲酒状況等の諸資料に基づき、政令の基準値を超えるアルコールを保有していたと推認することは、証拠裁判主義および自由心証主義の観点から合理的であり、相当な判断であるといえる。
結論
アルコール保有状態の認定に科学的判定法は必須ではなく、飲酒量や状況等の資料を総合して認定し得るため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
酒気帯び運転の立証において、呼気検査等が実施できなかった場合でも、目撃証言や飲酒量等の間接事実から基準値以上の保有を認定できるとする実務上の指針を示すものである。答案上は、事実認定における証拠の許容性と証明力の問題として扱う。
事件番号: 昭和42(あ)601 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上過失致死傷罪の公訴事実において、酒気帯び運転の事実は独立した犯罪事実としてではなく、過失の一態様として認定し、量刑の資料として考慮することが可能である。 第1 事案の概要:被告人が業務上過失傷害罪で起訴された際、原判決は道路交通取締法(当時)違反の罪としてではなく、業務上過失傷害罪における「…
事件番号: 昭和52(あ)834 / 裁判年月日: 昭和52年9月19日 / 結論: 棄却
道路交通法一一九条一項七号の二に規定する酒気帯び運転の罪の故意が成立するためには、行為者において、アルコールを自己の身体に保有しながら車両等の運転をすることの認識があれば足り、同法施行令四四条の三所定のアルコール保有量の数値まで認識している必要はない。
事件番号: 昭和43(あ)1424 / 裁判年月日: 昭和44年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】飲酒の影響により前方注視が困難な状態で運転を開始し事故を起こした場合、運転を回避し事故を防止すべき業務上の注意義務を怠ったものとして、業務上過失致死傷罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は飲酒後に自動車を運転したが、その際、酔いのため確実な前方注視が困難な状態となっていた。被告人はそのまま進行…