量刑事情としての犯罪事実の摘示と憲法三一条
憲法31条
判旨
被告人の過失の態様を明らかにするため、犯罪事実に密接に関連する事実を量刑上の情状として考慮することは、直ちに余罪を実質的に処罰する趣旨とはいえず、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
量刑において、起訴されていない別罪(道路交通法違反)に該当し得る事実を考慮することが、いわゆる余罪の不当な考慮として憲法31条に違反するか。
規範
量刑の判断において、起訴された犯罪事実の概要や過失の程度を明らかにする目的で、その背景にある事実を情状として考慮することは許される。それが直ちに別個の犯罪事実(余罪)を実質的に処罰する趣旨で考慮されたものでない限り、適正手続きに反するものではない。
重要事実
被告人は、業務上過失傷害の罪で起訴された。原判決は、被告人が酒酔いと睡気により正常な運転が困難な状態であったにもかかわらず、直ちに運転を中止せず継続したことを過失の内容として摘記した。これに対し、弁護人は、道路交通法違反という余罪を実質的に処罰したものであり、憲法31条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
原判決が判示した内容は、本件業務上過失傷害罪における過失の大きさを明らかにするための「犯罪事実の概要」の摘記である。これは、酒酔い等の状態で運転を継続したという一連の経緯を、被告人の過失が重大であることを示すための量刑上の情状(一事情)として考慮したものにすぎない。したがって、道路交通法違反という余罪を別途認定して実質的に処罰したとは認められない。
結論
本件の量刑資料としての事実考慮は余罪処罰に当たらず、憲法31条に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
量刑判断における「犯罪事実に密接に関連する情状」の考慮限界を示す。余罪を量刑上考慮する場合、それが「犯行の態様や悪質性を評価するための事情」にとどまるのか、それとも「未起訴の犯罪を実質的に処罰する意図」があるのかを区別する際の指標となる。
事件番号: 昭和50(あ)510 / 裁判年月日: 昭和50年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料に供することは許されないが、被告人の性格、経歴、犯行の動機、態様、目的等の情状を推知するための資料とすることは憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された犯罪事実以外の事実(余罪)について、原判決が量刑上考慮したことに対し、弁護人は、これが実…
事件番号: 昭和44(あ)908 / 裁判年月日: 昭和44年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない犯罪事実であっても、それが本件起訴にかかる犯罪事実の情状として認定され、量刑の資料とされるにすぎない場合は、憲法31条、39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事起訴された事案において、原判決が起訴されていない一定の事実を認定した。これに対し弁護側は、当該事実を量刑の資料…
事件番号: 昭和50(あ)1700 / 裁判年月日: 昭和50年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない余罪を量刑の資料として考慮することは、それが単なる被告人の性格、経歴、犯罪の動機、目的等の情状を推知するための資料にとどまる限り許容される。 第1 事案の概要:被告人が自動車を運転し交通事故を起こした等の本件被告事件において、原判決は量刑の判断にあたり、被告人が飲酒の影響が残ってい…