判旨
労働組合員が、面会を拒絶する局長の管理する局長室に対し、窓から庇を伝って侵入する行為は、労働組合法1条2項の正当な行為には当たらず、住居侵入罪を構成する。
問題の所在(論点)
労働組合員による団体行動の一環として行われた局長室への侵入行為が、刑法130条の罪責を免れる「労働組合の正当な行為」(労働組合法1条2項)に該当するか。
規範
労働組合法1条2項による刑事免責が認められるためには、当該行為が「労働組合の正当な行為」といえなければならない。単なる労務提供の拒否や静穏な面会要求の範囲を超え、他者の管理権を侵害する実力行使を伴う行為は、特段の事情がない限り正当な行為とは認められない。
重要事実
被告人は、局長室のドアが施錠され、局長が組合員との面会を拒んでいることを認識していた。それにもかかわらず、隣室の窓から庇に出て、局長の承諾を得ることなく窓から局長室内に侵入した。この行為は、単なる労務拒否や静穏な面会要求の態様を超えるものであった。
あてはめ
被告人の行為は、施錠された局長室に対して窓から庇を伝って侵入するという実力行使を伴うものである。これは、局長の看守権を著しく侵害するものであり、常軌を逸した実力の行使といわざるを得ない。したがって、かかる行為は「正当な行為」としての枠内にとどまるものではなく、違法性が阻却されないと解される。
結論
被告人の行為は労働組合法1条2項の正当な行為とはいえず、住居侵入罪の成立を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
本件は、昭和40年代の公共企業体労働関係法(公労法)下の事案であるが、労働組合活動に伴う施設管理権侵害の限界を示す一般論として、民間企業の労働紛争における正当性の判断にも妥当する。
事件番号: 昭和40(あ)399 / 裁判年月日: 昭和42年2月7日 / 結論: 破棄自判
一 特定郵便局事務室において、当日の窓口現金事務の終了後、やがて現金収納のために来る銀行便に間に合うように、同局局長が自ら現金の集計整理にたずさわつていた際、労働組合の役員らが右局長の制止にもかかわらず同事務室内への立入を強行した(判文参照)ときは、たとえそれが同局に労働条件に関する事項について法規や協約の違反その他取…
事件番号: 昭和52(あ)2090 / 裁判年月日: 昭和54年12月19日 / 結論: 棄却
一 失業対策事業等に就労する日雇労働者は、その使用者である事業主体に対する関係で団体交渉権を有する。 二 多数の勢威を背景に実力を行使して団体交渉を迫り、要求を受けながら県庁庁舎から退去しなかつた被告人らの本件所為(原判文参照)は、その手段・方法において社会通念の許容する団体交渉ないし団体行動権の正当な行使にあたらない…
事件番号: 昭和41(あ)617 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、労働組合の正当な行為についてのみ認められるものであり、暴力の行使に及ぶ行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱するため、刑事免責の規定は適用されない。 第1 事案の概要:被告人は、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。第一審お…