D労働組合員約六〇名が、鉄道管理、局係員の制止無視して、午前八時過ぎごろ、管理局庁舎屋上に立入り、屋上から懸垂幕をたらしたり、鉄道旗を掲揚中の柱に組合旗を併わせて掲げたりしたうえ、同庁舎四階から屋上に通ずる出入口の戸を屋上の側から押えて閉鎖し、同管理局関係者の屋上への立入を阻止する態勢をととのえ、次いで同庁舎前に参集した約二〇〇名の組合員らと呼応し一団となつて労働歌を合唱したり、スクラムを組んでデモ行進をしたりして、かなり喧騒をきわめたので、同管理局長が、右屋上参集者に対し、庁舎外への退去を要求したのにかかわらず午前四時ごろまで右屋上にとどまり、庁舎外に退去しなかつたときは、建造物侵入罪(不退去罪)が成立する。
建造物侵入罪(不退去罪)が成立するとされた事例
憲法28条,刑法130条
判旨
労働組合員らが抗議意思表明等のため管理権者の制止を無視して庁舎屋上に立ち入り、退去要求に従わず長時間留まった行為は、管理権者の受認限度を超えるため、不退去罪における「正当な理由」のない行為にあたる。
問題の所在(論点)
労働組合活動の一環として行われた庁舎屋上への立ち入りおよび滞留が、刑法上の不退去罪(130条後段)の構成要件に該当するか。特に、組合活動としての正当性があるといえるか、あるいは管理権者の受認限度を超えているかが問題となる。
規範
労働組合による組合活動として行われる庁舎の利用であっても、その活動の目的や手段が、管理権者の有する庁舎管理権を不当に侵害し、管理権者が受認すべき限度を超える場合には、正当な行為とはいえず、刑法上の違法性を有する。
重要事実
岡山鉄道管理局の労働組合員である被告人らは、昇給是正等の紛争を有利に進めるため、管理局庁舎の屋上に係員の制止を無視して立ち入った。被告人らは屋上から懸垂幕を垂らし、出入口を内側から押さえて管理局関係者の立入りを阻止する態勢をとった上で、約6時間にわたり約200名で労働歌の合唱やデモ行進を行い、喧騒を極めた。管理局長による約40回にわたる退去要求にもかかわらず、被告人らは午後4時ごろまで退去しなかった。
あてはめ
被告人らの企図した目的はともかく、その手段として採られた行為は、係員の制止を無視した立入り、出入口の封鎖、多数人による喧騒を伴うデモ行進という態様であった。これに加え、約40回にも及ぶ管理局長の退去要求を無視して長時間滞留した事実は、管理権者の円滑な庁舎管理を著しく妨げるものである。したがって、当該行為は管理権者が受認すべき限度を超えたものと評価される。
結論
被告人らの行為は正当なものとはいえず、退去要求に従わなかった点について不退去罪が成立する。
実務上の射程
職場内での組合活動(いわゆる企業内活動)と施設管理権の関係を画した判例である。活動の態様が平穏を欠き、管理権者の業務遂行や施設管理を実質的に阻害するレベル(受認限度の逸脱)に達している場合には、労働基本権を背景とした正当性を否定する判断基準として機能する。
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