判旨
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された刑が、被告人にとって過重であっても、直ちに同条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
事実審の裁判官が法律の範囲内で量定した刑が被告人にとって過重である場合に、憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当するか。また、情状の考慮において差別的取扱いをしないことが憲法14条との関係でどのように評価されるか。
規範
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする、人道上残酷と認められる刑罰を意味する。したがって、裁判官が法律の許す範囲内で普通の刑を量定した場合、それが被告人にとって過重な刑であるとしても、直ちに同条に違反することはない。
重要事実
被告人が犯した罪に対し、第一審および原審は法律の定める範囲内で刑を量定したが、弁護人は当該量刑が被告人にとって過重であることを理由として、憲法36条(残虐な刑罰の禁止)および憲法14条(法の下の平等)に違反すると主張して上告した。なお、原判決は弁償の事実等の諸事情を考慮した上で第一審の量刑を維持していた。
あてはめ
本件における量刑は、事実審の裁判官が法律の許す範囲内で行った「普通の刑」の量定である。不必要な苦痛を強いる人道上残酷な内容とは認められず、単に被告人の主観において過重であるというだけでは「残虐な刑罰」の定義には当てはまらない。また、原判決は弁償の事実等の有利な事情を検討した上で、犯罪の情状に照らし量刑が重すぎないことを判断しており、憲法14条が禁じる不当な差別があったとも認められない。
結論
本件の量刑は憲法36条および14条に違反せず、上告は棄却される。
実務上の射程
死刑制度の合憲性等、憲法36条の解釈が問題となる場面で「残虐な刑罰」の定義を示すための基礎的な規範として用いる。個別の量刑不当を憲法違反に引き上げる主張を排斥する際の実務上の指針となる。
事件番号: 昭和34(あ)772 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上過失致死傷罪(刑法211条)を通常の過失致死傷罪(209条・210条)より重く処罰することは、憲法14条の法の下の平等に反しない。一定の業務に従事する者の属性は、憲法14条が禁止する差別の基礎となる身分には当たらないからである。 第1 事案の概要:上告人は、業務上過失致死傷罪(刑法211条)…
事件番号: 昭和30(あ)480 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 棄却
刑法第二一一条は憲法第一四条に違反しない。