判旨
共犯者に対し有罪判決をした裁判官が、被告人の事件を審理しても、直ちに忌避原因にはならず、憲法の定める「公平な裁判所」の要請に反しない。また、共謀に参加した事実が認められれば、直接実行行為に関与せずとも共謀共同正犯としての刑責を負わせることは合憲である。
問題の所在(論点)
1. 共犯者につき有罪判決を下した裁判官が、被告人の事件の審判に関与することは、憲法37条1項の「公平な裁判所」に反するか。 2. 直接実行行為に関与していない共謀者に刑責を負わせることは、憲法31条の適正手続に反するか。
規範
1. 公平な裁判所(憲法37条1項):共犯者の裁判を担当した裁判官が被告人の裁判を担当することは、それのみでは刑事訴訟法上の忌避原因に当たらず、公平な裁判所による裁判を侵害しない。 2. 共謀共同正犯(憲法31条):犯罪の共謀に参加した事実が認められる場合には、自ら直接実行行為に関与していない者であっても、共同正犯の刑責を負わせることが可能である。
重要事実
被告人は、共通の犯罪事実について共謀したとされる共犯者が既に有罪判決を受けた際、その判決を下した裁判官と同一の裁判官によって審判を受けた。被告人側は、これが「公平な裁判所」による裁判を受ける権利(憲法37条1項)を侵害するものであると主張した。また、実行行為を分担していない者への共同正犯の成立についても、憲法31条違反を主張して上告した。
あてはめ
1. 共犯者に対して有罪判決を下した前歴があることは、裁判官が被告人の事件において偏見を持って審理に臨むべき客観的事情(忌避原因)とはいえない。したがって、当該裁判官が審判に当たっても憲法37条1項違反は生じない。 2. 共謀共同正犯については、実質的に犯罪に関与する意思をもって共謀に参加し、その共謀に基づいて他の者が実行した以上、実行行為への直接の不参加のみをもって処罰を否定することはできない。
結論
本件裁判の手続に憲法37条1項および31条違反の点は認められない。したがって、上告は棄却される。
事件番号: 昭和43(あ)2552 / 裁判年月日: 昭和44年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者に共同正犯としての刑責を負わせることは、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる共謀共同正犯における共謀に参加した事実が認められるものの、当該犯罪の実行行為自体には直接関与していなかっ…
実務上の射程
裁判官が別件(共犯者)の職務に関与したことは刑訴法20条の除斥事由にも該当しないことを前提とする。また、共謀共同正犯の合憲性については練馬事件(最大判昭33.5.28)の法理を再確認したものである。
事件番号: 昭和45(あ)721 / 裁判年月日: 昭和45年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審裁判所の構成が、同一の犯罪事実に関し、共犯者の別件被告事件を審理判決した裁判所の構成と同一であっても、憲法37条には違反しない。また、死刑制度は憲法31条、36条、13条等に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人は死刑判決を受けたが、上告において以下の主張を行った。①原審の裁判官が、…