判旨
原審裁判所の構成が、同一の犯罪事実に関し、共犯者の別件被告事件を審理判決した裁判所の構成と同一であっても、憲法37条には違反しない。また、死刑制度は憲法31条、36条、13条等に違反するものではない。
問題の所在(論点)
1.共犯者の別件に関与した裁判官が、被告人の本件を審理することが「公平な裁判所」(憲法37条1項)に反するか。2.死刑制度は憲法13条、31条、36条等の諸規定に違反するか。
規範
裁判官が、同一の犯罪事実について共犯者の別件を審理・判決した事実があるというのみでは、公平な裁判所の構成を定めた憲法37条の規定に反するものではない。また、死刑という刑罰そのものは、適正な手続による限り、憲法31条(適正手続)、36条(残虐な刑罰の禁止)を含む憲法各条項に抵触しない。
重要事実
被告人は死刑判決を受けたが、上告において以下の主張を行った。①原審の裁判官が、同一の犯罪事実について共犯者の別件被告事件を審理し判決を下したのと同一の構成であったことは、憲法37条の「公平な裁判所」の保障に反する。②死刑は憲法31条(適正手続)、36条(残虐な刑罰)、13条(生命の尊重)等に違反し、違憲である。
あてはめ
1.憲法37条違反の主張について:先行する共犯者の公判に関与した裁判官が被告人の公判を審判することは、それだけで不公平な裁判を招くおそれがあるとはいえず、大法廷判決の趣旨に照らしても同条に違反するものではない。2.死刑の憲法適合性について:憲法31条が「生命」を奪う刑罰の存在を前提としていること、および憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には死刑そのものは含まれないとする従来の大法廷判例の趣旨に照らせば、死刑制度は合憲である。
結論
1.原審が共犯者の別件を担当したのと同一の裁判官で構成されていても、憲法37条に違反しない。2.死刑制度は合憲であり、被告人の上告を棄却する。
事件番号: 昭和27(あ)1696 / 裁判年月日: 昭和27年10月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、憲法11条(基本的人権の享有)、13条(個人の尊重・生命権)、97条(基本的人権の保障)及び36条(拷問・残虐な刑罰の禁止)の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において死刑の判決を受けたところ、死刑制度そのものが憲法11条、13条、36条、97条、さらには9条に違反…
実務上の射程
刑事訴訟法上の除斥・忌避の事由(刑訴法20条等)との関係で重要となる。判例によれば、裁判官が共犯者の事件で証拠調べを行い予断を有し得る状況にあっても、直ちに憲法上の「不公平」には当たらないとされる。答案上は、裁判の公正さに対する外観的嫌疑を論じる際の合憲性の限界を示すものとして位置づけられる。
事件番号: 昭和25(あ)3407 / 裁判年月日: 昭和26年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の組織・構成において偏頗のおそれのない裁判所を指し、共犯者間での量刑の差異のみを理由として同規定違反を問うことはできない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが関与した刑事事件において、被告人らは、共犯者間での量刑の相違があることを捉え、被告人の…
事件番号: 昭和41(あ)578 / 裁判年月日: 昭和41年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者に対し有罪判決をした裁判官が、被告人の事件を審理しても、直ちに忌避原因にはならず、憲法の定める「公平な裁判所」の要請に反しない。また、共謀に参加した事実が認められれば、直接実行行為に関与せずとも共謀共同正犯としての刑責を負わせることは合憲である。 第1 事案の概要:被告人は、共通の犯罪事実に…
事件番号: 昭和45(あ)293 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、強盗殺人罪等の重大な犯罪に対して死刑を科すことは、諸般の情状を考慮した上でやむを得ない場合には憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑の判決を受けた。弁護人は、死刑制度そ…