公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、労働者の募集をした職業安定法第六三条第二号の罪と、児童福祉法第三四条第一項第九号、第六〇条第二項、第三項の罪とは、牽連犯の関係にない。
職業安定法第六三条第二号の罪と児童福祉法第三四条第一項第九号第六〇条第二項第三項の罪との罪数関係
職業安定法63条2号,児童福祉法34条1項9号,児童福祉法60条2項,児童福祉法60条3項,刑法54条1項
判旨
職業安定法63条2号違反の罪(有害業務目的の労働者募集)と児童福祉法34条1項9号違反等の罪(有害影響行為目的の児童支配)は、牽連犯の関係にはない。
問題の所在(論点)
公衆衛生・公衆道徳上有害な業務への労働者募集罪(職安法63条2号)と、児童に有害な行為をさせる目的での児童支配罪(児福法34条1項9号等)との間に、刑法54条1項後段の牽連犯の関係が認められるか。
規範
刑法54条1項後段の「犯罪の手段又は結果である行為」とは、その犯罪の性質上、通常その手段又は結果として行われる関係にあるものを指す。二つの罪がそれぞれ異なる保護法益を目的とし、かつ一方の行為が当然にもう一方の行為の手段または結果となる関係にない場合には、併合罪(刑法45条)として処理される。
重要事実
被告人は、公衆衛生および公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行った(職業安定法63条2号)。また、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、児童を自己の支配下に置いた(児童福祉法34条1項9号、60条2項・3項)。これら二つの行為について、刑法上の罪数関係が争われた。
事件番号: 平成19(あ)619 / 裁判年月日: 平成21年10月21日 / 結論: 棄却
被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪は,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にある。
あてはめ
職業安定法違反の罪は労働市場の適正や公衆道徳を保護せんとするものである。一方、児童福祉法違反の罪は児童の健全な育成と福祉を保護せんとするものである。労働者の募集行為が直ちに児童を自己の支配下に置く行為の手段であるとはいえず、また児童支配の結果として労働者募集が行われるという関係にもない。両罪は犯罪の性質上、一方が他方の手段または結果となる関係にあるとは認められないため、牽連犯とは解されない。
結論
両罪は牽連犯の関係にない(併合罪となる)。
実務上の射程
数罪の罪数関係を検討する際、単に目的が共通している、あるいは時間的に連続しているというだけでは牽連犯とはならず、犯罪の性質上の類型的な関連性が必要であることを示す。実務上は、特別法間の罪数判断において保護法益や行為態様の異同を重視する指標となる。
事件番号: 昭和41(あ)2471 / 裁判年月日: 昭和42年11月8日 / 結論: 棄却
本件のようないわゆる「トルコ風呂」の事業は、労働基準法第八条第一四号の事業に該当する。