被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪は,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にある。
児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
児童福祉法34条1項6号,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,刑法54条1項前段,刑法45条前段,少年法(平成20年法律第71号による改正前のもの)37条
判旨
児童福祉法34条1項6号違反(児童に淫行をさせる罪)と児童ポルノ法7条3項(児童ポルノ製造罪)は、被害児童に性交等をさせて撮影した場合であっても、行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるため、観念的競合ではなく併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
被害児童に性交等をさせてこれを撮影し児童ポルノを製造した場合において、児童福祉法34条1項6号違反の罪と児童ポルノ法7条3項の罪は、観念的競合と併合罪のいずれの関係に立つか。
規範
1個の行為が2個以上の罪名に触れる「観念的競合」(刑法54条1項前段)にあたるか否かは、各罪の構成要件を比較し、行為者の動態が社会的見解上1つのものといえるかによって判断される。両罪の行為が通常伴う関係にあるといえず、行為の性質等から動態が社会的見解上別個のものといえる場合には、併合罪(同法45条前段)となる。
重要事実
被告人は、当時勤務していた中学校の生徒である被害児童(14〜15歳)に対し、20回にわたり性交又は性交類似行為をさせて児童に淫行をさせる行為を行った。そのうち13回において、性交等に係る姿態をとらせ、これをデジタルビデオカメラで撮影して児童ポルノを製造した。第1審および原審は、児童福祉法違反と児童ポルノ法違反を観念的競合と判断した。
事件番号: 平成26(あ)1546 / 裁判年月日: 平成28年6月21日 / 結論: 棄却
1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいい,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,これに含まれる。 2 児童福祉法34条1…
あてはめ
児童に淫行をさせる罪は「淫行をさせること」を構成要件とするのに対し、児童ポルノ製造罪は「児童に特定の姿態をとらせ、これを媒体に描写すること」を構成要件とする。本件のように性交等をさせて撮影し児童ポルノを製造する場合、両罪の行為には一部重なる点はある。しかし、淫行行為と撮影による製造行為が「通常伴う関係」にあるとはいえない。したがって、両行為の性質等に照らせば、行為者の動態は社会的見解上別個のものと評価される。
結論
両罪は観念的競合の関係にはなく、併合罪の関係にある。したがって、併合罪として処理すべきところを観念的競合とした原判決の判断は法令違反であるが、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
実務上の射程
数罪の罪数関係、特に「1個の行為」の判断において、行為の態様が重なっていても社会的見解上別個であれば併合罪となることを示す。答案では、単に構成要件の一部重複を指摘するだけでなく、行為の性質や随伴性の有無から「動態が別個か」を論理的に説明する際の指標となる。
事件番号: 昭和41(あ)1959 / 裁判年月日: 昭和42年7月6日 / 結論: 棄却
公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、労働者の募集をした職業安定法第六三条第二号の罪と、児童福祉法第三四条第一項第九号、第六〇条第二項、第三項の罪とは、牽連犯の関係にない。