児童をして多数の婦女とともに自己の占有もしくは管理する場所に居住させ、売春させることを業としたときは、一個の行為にして児童福祉法第六〇条第一項の罪と売春防止法第一二条の罪との二個の罪名に触れる場合にあたる。
児童福祉法第六〇条第一項の罪と売春防止法第一二条の罪とが想像的競合となる事例
児童福祉法34条1項6号,児童福祉法60条1項,売春防止法12条,刑法54条1項
判旨
児童福祉法違反(淫行をさせる行為)と売春防止法違反(売春をさせることを業とする行為)が、犯行期間・場所が重なり、実質的に同一の行為といえる場合には、一個の行為が数個の罪名に触れる観念的競合の関係にある。そのため、一方の罪について確定判決があるときは、他方の罪についても一事不再理の効力が及び、免訴すべきである。
問題の所在(論点)
児童福祉法60条1項違反の罪と売春防止法12条違反の罪が、観念的競合の関係にあるか。また、一方に確定判決がある場合に他方の公訴事実に一事不再理の効力が及ぶか。
規範
一個の行為が数個の罪名に触れる場合(刑法54条1項前段の観念的競合)においては、その一部の罪について確定判決を経たときは、その確定判決の効力は他の罪にも及び、刑事訴訟法337条1号により免訴の判決をすべきものとする。
重要事実
被告人は、昭和34年7月から10月にかけて、児童に対し不特定多数の男性と淫行をなすことを慫慂し、淫行をさせた(児童福祉法違反)。一方で被告人は、同年2月から11月にかけて、複数の婦女を住居に居住させ、遊客を相手に売春をさせることを業とした(売春防止法違反)。後者の売春防止法違反については、本件(児童福祉法違反)の判決言い渡し前に懲役10月等の判決が言い渡され、既に確定していた。両罪は、対象となる婦女の年齢に差異があるものの、実質的には被告人が婦女に性交をさせて対価を得たものであり、犯行期間が重複し、場所も同一であった。
あてはめ
本件の両犯罪事実は、婦女の年齢を異にするだけであり、その実質はいずれも被告人が婦女をして対価を得て不特定の男性と性交せしめる行為を内容とするものである。また、犯行の期間が重複しており、犯行の場所も同一である。したがって、両罪の法益に差異があることを考慮しても、被告人の所為は一個の行為にして数個の罪名に触れる観念的競合と解するのが相当である。売春防止法違反の確定判決がある以上、本件児童福祉法違反は、刑事訴訟法337条1号にいう「確定判決を経たとき」に該当する。
結論
被告人は免訴される。原判決および第一審判決は破棄され、本件については免訴の言渡しをすべきである。
実務上の射程
観念的競合の成否を判断する際、実質的な行為の態様(目的、期間、場所の共通性)に着目する手法を示した例である。答案上は、一事不再理の効力が及ぶ範囲について「一個の行為(観念的競合)」に該当するかを論じる際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和41(あ)1959 / 裁判年月日: 昭和42年7月6日 / 結論: 棄却
公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、労働者の募集をした職業安定法第六三条第二号の罪と、児童福祉法第三四条第一項第九号、第六〇条第二項、第三項の罪とは、牽連犯の関係にない。