本件のようないわゆる「トルコ風呂」の事業は、労働基準法第八条第一四号の事業に該当する。
いわゆる「トルコ風呂」と労働基準法第八条の適用事業の種類
労働基準法8条,労働基準法62条,労働基準法119条1号
判旨
児童福祉法34条1項9号違反の罪は児童ごとに包括して一罪が成立し、これと労働基準法違反の罪とは、1つの行為が複数の罪名に触れる場合として想像的競合の関係に立つ。
問題の所在(論点)
1.児童福祉法34条1項9号違反の罪の罪数(単位)はどうあるべきか。2.児童福祉法違反の罪と労働基準法違反の罪が同時に成立する場合、いかなる罪数関係になるか。
規範
児童福祉法34条1項9号(淫行をさせる行為等の禁止)違反の罪の罪数については、対象となる児童ごとに包括して一罪が成立する。また、同一の行為態様が労働基準法上の年少者保護規定(深夜業禁止等)にも抵触する場合、両罪は刑法54条1項前段の想像的競合の関係に立つものと解する。
重要事実
被告人は、A温泉の事業において、満18歳未満の女子児童らに対し、児童福祉法34条1項9号に該当する行為(児童に淫行をさせる行為等)を行わせるとともに、労働基準法62条1項等に違反して深夜業に従事させた。原審は、児童福祉法違反については児童ごとに一罪が成立するとし、これと労働基準法違反の罪が想像的競合の関係にあると判断した。被告人側は、罪数判断の誤り等を理由に上告した。
事件番号: 昭和58(あ)179 / 裁判年月日: 昭和59年11月30日 / 結論: 棄却
満一八歳に満たない児童を、裸体の女性の下腹部を露骨に強調して撮影した写真集(いわゆるビニール本)の販売店で店員としてその販売に従事させることは、児童福祉法三四条一項九号にいう「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる」ことに該当し、この場合、必ずしも右写真集が刑法上のわいせつ物であることを要しない。
あてはめ
児童福祉法34条1項9号の規定は、児童の心身の健全な育成を保護法益とするものであるから、保護の客体である児童ごとに罪が成立すると解するのが法意にかなう。本件において、被告人が複数の児童に対し同法違反の行為を行ったことは、各児童に対する包括的な一罪を構成する。その上で、当該行為が同時に労働基準法上の深夜業禁止規定(8条14号の事業に該当)にも違反する態様で行われた場合、1つの身体的活動が複数の法的評価を受けることになるため、両罪は想像的競合として処理されるのが相当である。
結論
児童福祉法違反は児童ごとに一罪となり、これと労働基準法違反とは想像的競合となる。上告棄却。
実務上の射程
数個の法益侵害が1つの行為によって引き起こされた場合の罪数処理の判断指針となる。特に児童福祉法違反のように、被害者ごとに罪が成立する構成要件と、労働法上の公法的規制違反が重なる場面での処理として、実務上、想像的競合を認める基準として活用できる。
事件番号: 昭和41(あ)1959 / 裁判年月日: 昭和42年7月6日 / 結論: 棄却
公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、労働者の募集をした職業安定法第六三条第二号の罪と、児童福祉法第三四条第一項第九号、第六〇条第二項、第三項の罪とは、牽連犯の関係にない。
事件番号: 平成19(あ)619 / 裁判年月日: 平成21年10月21日 / 結論: 棄却
被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪は,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にある。