満一八歳に満たない児童を、裸体の女性の下腹部を露骨に強調して撮影した写真集(いわゆるビニール本)の販売店で店員としてその販売に従事させることは、児童福祉法三四条一項九号にいう「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる」ことに該当し、この場合、必ずしも右写真集が刑法上のわいせつ物であることを要しない。
児童福祉法三四条一項九号にいう「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる」ことにあたる場合
児童福祉法34条1項9号
判旨
児童福祉法34条1項9号の「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる」ことにあたるか否かは、必ずしも対象物が刑法上のわいせつ物であることを要しない。裸体の女性の下腹部を露骨に強調した写真集を販売させる行為は、同号の禁止行為に該当する。
問題の所在(論点)
児童に性的な写真集を販売させる行為が、児童福祉法34条1項9号の「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる」にあたるか。また、その判断において当該写真集が刑法上の「わいせつ物」に該当する必要があるか。
規範
児童福祉法34条1項9号にいう「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる」か否かの判断において、対象となる物品が刑法上のわいせつ物(175条)に該当することは必須ではない。児童の健全な育成を阻害する客観的な態様があれば、同号の禁止行為に該当すると解すべきである。
重要事実
被告人は、満18歳に満たない児童に対し、裸体の女性の下腹部を露骨に強調して撮影した写真が多数掲載されている写真集(いわゆるビニール本)の販売店において、店員としてその販売業務に従事させた。
事件番号: 昭和41(あ)2471 / 裁判年月日: 昭和42年11月8日 / 結論: 棄却
本件のようないわゆる「トルコ風呂」の事業は、労働基準法第八条第一四号の事業に該当する。
あてはめ
本件写真集は、裸体の女性の下腹部を露骨に強調して撮影した写真を多数掲載するものであり、児童の性に関する健全な価値観の形成を著しく阻害する内容といえる。このような物品を直接取り扱い、不特定多数に販売する業務に従事させることは、その業務の性質上、児童の心身に有害な影響を与える蓋然性が極めて高い。したがって、仮に当該写真集が直ちに刑法上のわいせつ物に該当しないとしても、同法34条1項9号の禁止する行為をさせたものと評価される。
結論
児童に裸体写真集の販売に従事させる行為は、児童福祉法34条1項9号に該当する。刑法上のわいせつ物該当性は要件ではない。
実務上の射程
行政法規としての児童福祉法の目的(児童の保護・健全育成)が、刑法(風俗犯)の罰則とは独立した独自の判断基準を有することを示した事例である。答案上では、わいせつ物該当性がないことを理由とする違法性阻却の主張を否定する際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和42(あ)299 / 裁判年月日: 昭和42年12月2日 / 結論: 棄却
一 トルコ風呂経営者と児童であるいわゆるミストルコとの間の雇傭契約が、その児童の親権者の同意を得ていないものである場合、当該雇傭関係は、児童福祉法第三四条第一項第九号にいう「正当な雇用関係」にあたらない。 二 トルコ風呂経営者である被告人らと児童であるミストルコらとの関係の実体につき、出勤時間が定められ、無断欠勤、遅刻…