軽飲食店の経営者が一八歳未満の住込女中と客に数回に店の一室を提供し同女がそこで客に売淫していることを認識しながらこれを承認し同女が売淫につて得た対価を蒲団代等の名義で折半取得する行為はたとえ右売淫が児童である同女自らの意思に基く場合でも児童福祉法第三四条第一項第六号の児童に淫行をさせる行為に該当すると解するのが相当である。
児童福祉法第三四条第一項第六号の児童に淫行をさせる行為にあたる一事例
児童福祉法34条1項6号
判旨
児童福祉法34条1項6号にいう「児童に淫行をさせる行為」とは、たとえ児童自らの意思に基づく売淫であっても、場所の提供や対価の取得を通じて児童に売淫をさせることを含む。強制や借金による拘束といった有形無形の情勢を形成することは、同罪の構成要件として必ずしも必要ではない。
問題の所在(論点)
児童自らの意思に基づいて売淫が行われ、かつ暴行・脅迫等の強制的手段による身体的拘束が存在しない場合であっても、場所を提供して売淫をさせた行為が児童福祉法34条1項6号の「児童に淫行をさせる行為」に該当するか。
規範
「児童に淫行をさせる行為」(児童福祉法34条1項6号、罰則60条1項)とは、児童を売淫の相手方に引き合わせ、これに売淫をさせる一切の行為を指す。児童自らの意思に基づく場合であっても、行為者が場所を提供し、または売淫の対価を利得するなどして、児童が売淫を行う状況を現出させたのであれば同罪が成立する。暴行・脅迫や借金による身体的・精神的拘束(逃げられないような有形無形の情勢の作出)は、本罪の成立に不可欠な要件ではない。
重要事実
軽飲食店を経営する被告人は、住込女中として雇い入れた満17歳の児童に対し、自宅2階の一室を売淫の場所として提供した。被告人は、昭和28年2月から5月までの間、数回にわたり数名の客に当該児童を対面させて売淫を行わせた。さらに、被告人は児童が客から得た売淫の対価を「蒲団代」等の名義で折半して取得していた。児童の売淫行為は自発的な意思に基づく側面があったが、被告人がその機会と場所を設定していた。
あてはめ
被告人は、自己が経営する飲食店に児童を住み込ませ、自宅の一室という具体的な場所を客と児童の売淫のために提供している。また、児童が得た対価を折半して取得するという経済的利益を享受する関係を構築している。このような行為は、たとえ児童が自らの意思で売淫に及んでいたとしても、行為者が児童を淫行の主体として利用し、その状況を管理・維持しているといえる。本罪は児童の健全育成を保護するものであるから、強制や拘束といった特段の事情がなくても、場所の提供と利得を伴う売淫の媒介行為があれば、児童に淫行をさせたものと評価される。
結論
被告人の行為は、児童福祉法34条1項6号にいう「児童に淫行をさせる行為」に該当する。
実務上の射程
児童の自発的な売淫であっても場所提供等の介入があれば同罪が成立することを示し、構成要件における「強制性」や「身体的拘束」の不要性を明確にした。児童福祉法違反の成否を検討する際、強制手段の有無にかかわらず、児童が淫行を行う環境を提供・助長している事実があれば、本判例を根拠に規範を定立できる。
事件番号: 平成8(あ)1308 / 裁判年月日: 平成10年11月2日 / 結論: 棄却
中学校の教師が、その立場を利用し、女子生徒に対し、性具の電動バイブレーターを示して自慰行為をするよう勧め、あるいは、これを手渡し、一緒に入っているこたつ又は布団の中でこれを使用して自慰行為をするに至らせた行為は、いずれも児童福祉法三四条一項六号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たる。