家出中の児童を、軽食喫茶店内の賭博遊技機を設置したゲーム室で働かせるため雇い入れ、同じ建物内の一室に居住させ、勤務につき指導監督するほか、食事を給するなどして、児童に心理的影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置き、被告人らの影響下から離脱することを困難にさせた所為(判文参照)は、児童福祉法三四条一項九号にいう児童を「自己の支配下に置く行為」にあたる。
児童福祉法三四条一項九号にいう児童を「自己の支配下に置く行為」にあたるとされた事例
児童福祉法34条1項9号,児童福祉法60条2項
判旨
児童福祉法34条1項9号(現34条1項10号)の「自己の支配下に置く」とは、児童に心理的影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置いて、支配からの離脱を困難にさせることをいう。
問題の所在(論点)
家出中の児童を雇用し、住居や食事を提供する行為が、児童福祉法34条1項9号(当時)にいう児童を「自己の支配下に置く行為」に該当するか。
規範
児童福祉法が禁止する児童を「自己の支配下に置く」行為とは、児童に対して心理的な影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置くことによって、加害者の影響下から離脱することを困難にさせる態様のものをいう。
重要事実
被告人Aは、18歳未満の児童Bが家出中であることを知りながら、親権者の同意なく自らが管理するビルの居室に寝泊まりさせた。さらに、Aは実弟Eと協力し、Bを同ビル内の賭博遊技機を設置した店舗の店員として雇い入れ、見張り等の業務に従事させた。その際、被告人らはBに対し、勤務の指導監督を行うだけでなく、無料で食事を供与するなどの便宜を与えていた。
あてはめ
被告人らは、家出中で身寄りのない児童Bに対し、住居(ビル居室)と仕事(店舗業務)、さらには無料の食事という生活基盤を包括的に提供している。このような雇用及び居住関係は、児童に対して強い心理的影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置くものといえる。また、これらの便益供与と業務上の指導監督が相まることで、児童が被告人らの影響下から自発的に離脱することを著しく困難にさせていると解される。
結論
被告人らの所為は、児童を「自己の支配下に置く行為」に該当する。したがって、児童福祉法違反が成立する。
実務上の射程
本判決は、物理的な拘束がなくとも、生活基盤の提供等を通じた「心理的制約」によって支配が成立することを示した点に射程がある。答案上は、児童の困窮状況(家出等)と、それを利用した便益供与・監護状況を具体的に摘示し、離脱の困難性を論証する際の規範として活用すべきである。
事件番号: 昭和30(あ)1283 / 裁判年月日: 昭和30年9月16日 / 結論: 棄却
児童福祉法第三四条第一項第七号にいう「児童を引き渡す行為」は児童の意思に反すると否と、また犯人が職業としてこれを行うと否とを問わず成立するものと解すべきである。