ビデオ録画の制作、販売等を目的とする株式会社の代表取締役が、会社の業務に関してわいせつビデオ録画を制作するに当たり、女優等の紹介業者との間で、右業者所属の一五歳の児童をその主演女優として出演させる契約を締結し、同児童に二日間にわたって男優を相手としたわいせつな演技をさせるなどして、同児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的でこれを自己の支配下に置いたという本件事実関係(判文参照)の下においては、右代表取締役は児童福祉法六〇条三項という「児童を使用する者」に当たる。
児童福祉法六〇条三項の「児童を使用する者」に当たるとされた事例
児童福祉法60条3項
判旨
児童にわいせつな演技をさせる目的でビデオ出演契約を締結し、自らの統括する業務として撮影を指揮・実施した者は、児童福祉法60条3項にいう「児童を使用する者」に当たる。
問題の所在(論点)
児童にわいせつな行為をさせる目的で児童を自己の支配下に置く罪(児童福祉法34条1項9号、60条3項)において、直接の雇用主ではない制作会社の代表取締役が「児童を使用する者」に当たるか。
規範
児童福祉法60条3項にいう「児童を使用する者」とは、児童との間に直接の雇用関係がある場合に限られず、実質的に児童を自己の業務に従事させ、その活動を支配・管理する立場にある者を指す。
重要事実
ビデオ制作会社代表の被告人は、15歳の児童を主演とするわいせつビデオの制作を企画した。被告人は、自ら児童を書類審査し、出演を最終決定した上で、紹介業者との間で出演料80万円の契約を締結した。その後、被告人の指揮監督下にある監督や従業員が、事前に立てた録画予定表に従い、2日間にわたって長時間、当該児童に男優を相手とする露骨な性戯や模擬性交等のわいせつな演技を行わせた。
事件番号: 平成26(あ)1546 / 裁判年月日: 平成28年6月21日 / 結論: 棄却
1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいい,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,これに含まれる。 2 児童福祉法34条1…
あてはめ
被告人は、会社の代表として業務全般を統括し、ビデオ制作の企画・脚本検討において具体的に指示を与えていた。また、児童の採用を自ら最終決定し、出演契約を締結させている。実際の撮影現場においても、被告人の部下である監督や制作関係者が作成した予定表に基づき、児童を長時間にわたり拘束してわいせつな演技をさせていた。これらの事実によれば、被告人は他者と意思を通じ、児童の心身に有害な影響を与える目的で、実質的に児童を自己の支配下に置いて業務に従事させていたといえる。
結論
被告人は、児童福祉法60条3項にいう「児童を使用する者」に該当する。
実務上の射程
本判決は、法的な雇用関係の有無にかかわらず、実質的な指揮命令系統や支配関係に基づいて「使用者」性を認める点に射程がある。法人代表者の刑事責任を追及する際、業務の決定権や現場への影響力を具体的事実から認定する手法として有用である。
事件番号: 昭和55(あ)1031 / 裁判年月日: 昭和56年4月8日 / 結論: 棄却
家出中の児童を、軽食喫茶店内の賭博遊技機を設置したゲーム室で働かせるため雇い入れ、同じ建物内の一室に居住させ、勤務につき指導監督するほか、食事を給するなどして、児童に心理的影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置き、被告人らの影響下から離脱することを困難にさせた所為(判文参照)は、児童福祉法三四条一項九号にいう児童を…