所論は、違憲(第三七条第三二条第三一条)をいうが、第一審で無罪を言い渡された被告人に対し、原審が事実の取調をした結果第一審の無罪判決を破棄し有罪の自判をなしても違憲でないこと、並びに、事実審査を第二審限りとし上告理由が刑訴法第四〇五条により制限されている関係上第一審の無罪判決を破棄自判により有罪とした第二審判決に対し上訴によつて事実誤認等を争う途が閉されているとしても違憲できないことは、当裁判所の判例(昭和三一年七月一八日大法廷判決、刑集一〇巻七号一一四七頁、昭和三一年九月二六日大法廷判決、刑集一〇巻九号一三九一頁、昭和二三年三月一〇日大法廷判決、刑集二巻三号一七五頁)の趣旨とするところである。
一 無罪を言い渡した第一審判決を控訴審が事実の取調の結果破棄し有罪の自判をすることの合憲性。 二 刑訴法第四〇五条による上告理由制限の合憲性。
憲法37条,憲法32条,憲法31条,刑訴法400条但書,刑訴法405条
判旨
第一審で無罪を言い渡された被告人に対し、控訴審が事実の取調べを行った結果、破棄自判により有罪としても、憲法31条、32条、37条に違反しない。また、上告理由が刑訴法405条により制限されているために事実誤認を争う途が閉ざされているとしても、合憲である。
問題の所在(論点)
第一審の無罪判決を控訴審が破棄して有罪を自判することが、憲法の定める適正手続および裁判を受ける権利等の保障に反しないか。また、上告審での不服申立理由が制限されている制度の合憲性が問題となる。
規範
1.第一審の無罪判決に対し、控訴審が事実取調べを経て破棄自判により有罪を言い渡すことは、適正な手続(憲法31条)や公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利(37条1項)に反しない。2.事実審査を控訴審までとし、上告理由を刑訴法405条所定の事由に限定することで、上告審での事実誤認等の主張が制限される制度設計も、裁判を受ける権利(32条)に抵触せず、憲法上許容される。
重要事実
被告人Aらは、第一審において無罪の言渡しを受けた。これに対し検察官が控訴したところ、控訴審(原審)は事実の取調べを実施した。その結果、原審は第一審判決に事実誤認があるとしてこれを破棄し、自ら有罪の判決を下した(破棄自判)。被告人側は、控訴審による破棄自判および、上告理由の制限により事実誤認を争えないことが、憲法31条、32条、37条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は過去の大法廷判決を引用し、以下の通り判断した。まず、控訴審において事実取調べを行った上で無罪判決を覆し有罪とすることは、現行の審級制度において想定された手続であり憲法に違反しない。次に、刑事訴訟法が事実審査を第二審までで終了させる構造を採り、上告理由を憲法違反や判例違反等に限定している点についても、被告人から事実誤認を争う機会を奪うものではあるが、審級制度の合理的な設計として憲法の許容範囲内である。本件においても、原審は証拠能力のある証拠に基づき適法に事実を認定しており、憲法違反の瑕疵は認められない。
結論
控訴審による無罪判決の破棄自判、および上告審における事実審査の制限は、いずれも憲法31条、32条、37条に違反しない。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
控訴審の破棄自判の合憲性を確認した判例である。司法試験においては、刑事訴訟法上の控訴審の性格(事後審的性格と続審的要素)や、審級制度の合憲性が問われる場面で、現行制度が被告人の防御権を不当に侵害するものではないことを根拠づける際に引用すべきである。
事件番号: 昭和30(あ)4051 / 裁判年月日: 昭和33年2月20日 / 結論: 棄却
一 控訴審が事実の取調をした以上、第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するにあたり、第一審において取り調べた証拠のみを挙示することはなんら違法でない。 二 原判決が全体の趣旨において引用の判例と異る判断をしたものというだけで、そのいかなる部分が引用の判例のいかなる部分と異るのか具体的に明らかでない主張は、上告理由として…