一 本件重油抜取り行為が、業務上横領罪に該当するとした原審の判断は正当である。 二 (原審の判断) 本件A丸に積み込まれた重油についてはその輸送タンクに八箇所の封印が施行されていたのであるから重油運送の業務に従事する者がその途中封印のままで内容物を抜き取るときは窃盗罪を構成するけれども、被告人Bは右A丸の船主兼船長として被告人Cは機関長として重油類の運搬これに伴う積み込み及び荷揚げ等の業務に従事していたものであるからA丸到着後荷受主立会のうえ油吐出用移送管の基部の封印を破棄したのちその重油をD丸又はE丸に移し替える際には荷受主に対する引渡を完了するまでは被告人B並にCらにおいて出荷主のためにこれを占有保管していたものであつて、その荷揚作業中油吐出用移送管の中途から他に誘導して抜き取る行為は出荷主を被害者とする業務上横領罪を構成するものと解するのが相当である。
業務上横領罪に該当するとされた事例
刑法253条
判旨
業務として保管・管理する重油を抜き取る行為は、委託の趣旨に反して権限なく領得するものであるから、業務上横領罪を構成する。
問題の所在(論点)
業務として保管中の重油を無断で抜き取る行為が、窃盗罪ではなく業務上横領罪(刑法253条)を構成するか。
規範
業務上横領罪(刑法253条)における「占有」とは、自己が業務として他人の物を事実上又は法律上に支配することをいい、その物を不法に領得する意思をもって処分する行為は「横領」に該当する。
重要事実
被告人らは、その業務として重油を管理・保管する立場にあったが、当該重油を保管場所から抜き取る行為に及んだ(なお、具体的な動機や抜取りの詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
被告人らは業務に基づいて重油を占有しており、これに領得の意思をもって抜取り行為を行ったことは、委託の任務に背いて他人の物を自己の支配下に移す行為といえる。したがって、当該行為は窃盗ではなく業務上の占有者による横領に該当すると解される。
結論
本件重油抜取り行為は、業務上横領罪に該当する。
実務上の射程
本決定は、管理・運搬業務等に従事する者が、その占有下にある物品を不法に領得した場合の罪責を簡潔に示している。司法試験においては、単純窃盗罪と業務上横領罪の区別(高度の占有可能性の有無)が問題となる場面で、業務上の占有が認められる事実を摘示した上で本決定を背景に横領罪を導くといった活用が可能である。
事件番号: 昭和25(れ)1850 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上自己の保管する物を売渡担保として提供する行為は、不法領得の意思の発現といえ、業務上横領罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、業務上他人の自動車を保管する立場にあった。被告人は、当該自動車を債務の担保として活用するため、債権者に対して売渡担保(譲渡担保)の形式で提供した。この事実に基づき…