判旨
控訴審において主張せず、原判決が判断していない事項についての上告理由(判例違反の主張)は、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
控訴審において主張せず、したがって原判決が判断の対象としなかった法律上の論点(罪数論等)について、上告段階で初めて判例違反を理由とする上告趣意とすることが許されるか。
規範
刑事訴訟法に基づく上告審の構造に鑑み、原審(控訴審)において主張されず、かつ原判決が判断の対象としなかった事項について、上告審で新たに判例違反を主張することは、適法な上告理由として認められない。
重要事実
被告人が第一審判決における二つの罪の成否について、それらが併合罪(刑法45条)となるか、あるいは包括一罪となるかという点について争った事案。被告人側は上告審において「包括一罪となるべきものを併合罪とした点に判例違反がある」と主張したが、この点は控訴審において何ら主張されておらず、原判決も判断を示していなかった。
あてはめ
本件において、弁護人が主張する「第一審判決判示第一の所為と同第二の所為の罪数関係」については、原審(控訴審)において何ら主張がなされていない。そのため、原判決はこの点について何ら判断を下していない。上告審は原判決の当否を審査するものであるから、原判決が判断していない事項を捉えて判例違反をいう主張は、上告理由の適法性を欠くといえる。
結論
本件上告は不適法であり、棄却される。
実務上の射程
上告審における「判例違反」の主張の制限を示す。控訴審での主張・立証を尽くさなかった事項を後から上告理由とすることはできないという、事後審としての性質を確認する際に引用される。ただし、職権調査事項や重大な事実誤認等がある場合には別途検討が必要となる。
事件番号: 昭和25(あ)1338 / 裁判年月日: 昭和26年6月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告趣意が刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を取り消すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:判決文からは被告人の具体的な犯罪事実や下級審の判断内容は不明であるが、被告人が最高裁判所に対し上告を申し立てた…