必要弁護事件につき、弁護人の選任がないまま、判決宣告のために公判廷を開き、判決の宣告をしても、何ら事件につき実体的審理が行われたものではないから、弁護権の行使を不法に制限したことにはならない。
弁護権の行使を不法に制限したことにならない事例。―必要弁護事件につき弁護人の選任がないまま開廷し判決の宣告をした場合―
刑訴法289条,刑訴法342条
判旨
必要的弁護事件において、弁論終結後の判決宣告期日に弁護人が不在であっても、その期日に実体的審理が行われない限り、弁護権を不当に制限したことにはならず適法である。また、接見禁止措置がなされたことのみをもって、直ちに自白の任意性に疑いが生じるとは断定できない。
問題の所在(論点)
1. 必要的弁護事件において、弁論終結後の判決宣告期日に弁護人が不在のまま判決を宣告することは、刑事訴訟法289条1項等に違反するか。2. 接見禁止措置がとられている状況下でなされた自白について、直ちに任意性が否定されるか。
規範
必要的弁護事件(刑事訴訟法289条1項)において弁護人が不在のまま開廷することが禁じられるのは、被告人の防御権を保障するためである。したがって、既に弁論が終結し、実体的な審理を伴わない判決の宣告のみを行う期日においては、弁護人の在廷は必ずしも必要ではなく、弁護権の不当な制限には当たらない。また、自白の任意性は供述当時の諸般の状況に照らして判断されるべきであり、接見禁止措置の存在のみから当然に任意性が否定されるものではない。
重要事実
被告人は偽証教唆等の罪で起訴された。原審は必要的弁護事件として審理され、弁護人及び被告人が出頭した公判期日において弁論を終結し、判決宣告期日を指定した。しかし、判決宣告期日の前日に被告人が私選弁護人を解任。判決当日、被告人は電報で期日変更を請求したが、裁判所はこれを却下し、弁護人不在のまま判決を言い渡した。また、捜査段階で接見禁止措置がとられていた期間中の自白の証拠能力も争われた。
事件番号: 昭和26(れ)521 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
旧刑訴法事件の控訴審において、必要的弁護事件につき、弁護人の立会なしに審理判決したときは、刑訴第四一一条第一号に該当する。
あてはめ
1. 本件では、第8回公判期日において弁護人立ち会いのもと既に弁論が終結しており、第9回公判期日は判決の言渡しのみを目的とするものであった。この期日において実体的な審理は一切行われていない。したがって、弁護人が不在であっても被告人の防御権を不当に制限したとはいえず、手続に違法はない。2. 自白の任意性については、接見禁止措置という一事のみをもって判断すべきではなく、供述当時の具体的状況を総合考慮すべきである。記録上、本件の取調経過等に照らせば、任意性を認めた原判決の判断は相当である。
結論
1. 判決宣告期日に弁護人が不在であっても、実体的な審理が行われない限り違法ではない。2. 接見禁止措置がなされていても、直ちに自白の任意性に疑いがあるとは断定できない。
実務上の射程
1. 必要的弁護事件における弁護人立会要件の限界を示す射程を持つ。実体的審理の有無が判断基準となるため、答案上は期日の性質(更新手続や証拠調べの有無)に留意して論じる必要がある。2. 違法収集証拠排除法則や自白法則の文脈で、接見禁止等の接見交通権侵害が直ちに証拠能力を否定するものではないという「事情の一つ」としての評価を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)339 / 裁判年月日: 昭和31年6月21日 / 結論: 棄却
原裁判所は控訴趣意書提出期間内たる昭和三〇年九月一二日(控訴趣意書提出最終日は同月二六日)弁護士甲を被告人の弁護人に選任し、同弁護人は右最終期日までに趣意書を提出することを引受けたが被告人と談合の結果同月二三日趣意書を提出しないで辞任し、同日原裁判所は弁護士乙を弁護人に選任し同弁護人は右最終期日までに趣意書を提出するこ…