原判決が、刑法第二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」とは、直接人に暴行を加えたり畏怖させたりする行為に限らず、一定の物的な状態を作為し、その状態のため人の自由な行動を不可能もしくは困難にするものもまたこれに当る旨の法律見解のもとに、他人の店舗南側に接近する道路上に、中古商品ケース外十七点位の家財道具箱を売物として並べ、右店舗南側に顧客の立入りを不可能ならしめた行為を、同条に当るとした第一審判決の判断を正当としたのは相当であり、当裁判所においても、これを是認することができる。
一 刑法第二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」の意義。 二 右「威力ヲ用ヒ」た場合に当るとされた事例。
刑法234条
判旨
刑法234条の威力業務妨害罪における「威力」とは、直接人に暴行を加えたり畏怖させたりする行為に限定されず、一定の物的な状態を作為し、その状態のため人の自由な行動を不可能もしくは困難にするものも含まれる。
問題の所在(論点)
威力業務妨害罪(刑法234条)における「威力」の意義。特に、直接的な対人暴行や脅迫を伴わず、物品の設置等の物的状態の作出によって業務を阻害する行為が「威力」に含まれるか。
規範
刑法234条にいう「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことをいい、直接人に暴行を加えたり畏怖させたりする行為のみならず、一定の物的な状態を作為し、その状態によって人の自由な行動を不可能または困難にさせる行為もこれに該当する。
重要事実
被告人は、他人の店舗の南側に隣接する道路上に、中古商品ケースを含む家財道具など約17点の物品を売物として陳列した。これにより、当該店舗の南側から顧客が立ち入ることを不可能にする状態を作り出した。
あてはめ
被告人の行為は、道路上に多数の家財道具を陳列するという物的な状態の作出である。この状態により、店舗への顧客の立ち入りという、本来ならば自由に行われるべき他人の行動が物理的に不可能となっている。これは、直接的な暴行等がない場合であっても、その物的状況を通じて他人の自由な意思決定や行動を妨げているといえるため、「威力」を用いたものと解される。
結論
物品を陳列して顧客の立ち入りを不可能にした行為は威力業務妨害罪に当たる。
実務上の射程
威力の概念を物理的妨害にまで広げた重要判例である。答案上は、本件のような「物的な状態の作出」による妨害のほか、多数のデモ隊による包囲や、嫌がらせ電話の殺到など、心理的・物理的に業務の円滑な遂行を困難にする事案において、本判例の規範を引用して威力を認定することになる。
事件番号: 昭和31(あ)1864 / 裁判年月日: 昭和32年2月21日 / 結論: 棄却
刑法第二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」とは、一定の行為の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力を用いれば足り、必ずしもそれが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない。
事件番号: 昭和37(あ)426 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 棄却
刑法第二三四条の「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解する相当とし、かつ右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであつて、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すべきである(昭和二五年(れ)第一八六四…