買収犯の如く法廷の期間内であると否とに拘らずそれ自体違法な選挙運動行為が数個ある場合には、事前運動の場合でも各行為毎に犯罪が成立すると解すべきことは、すでに当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一五二七号、同三五年四月二八日第一小法廷判決、刑集一四巻六号八二二頁)の説示するところである。
立候補届出前における数個の買収と犯罪の個数。
公職選挙法221条,公職選挙法239条1号,公職選挙法129条,刑法45条,刑法54条1項
判旨
公職選挙法上の買収罪のように、法定の期間内であるか否かを問わずそれ自体が違法な選挙運動行為が複数なされた場合、事前運動にあたる場合であっても、各行為ごとに一個の犯罪が成立し、併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
公職選挙法上の買収罪のように、時期を問わず一律に禁止されている選挙運動行為が複数行われた場合、それらは包括一罪となるか、あるいは各行為ごとに犯罪が成立し併合罪となるか。
規範
法定の期間内であると否とに拘らず、それ自体が違法な選挙運動行為が数個ある場合には、仮にそれが事前運動として行われた場合であっても、各行為ごとに独立して犯罪が成立し、刑法45条前段の併合罪として処断すべきである。
重要事実
被告人らは、公職選挙法に違反する買収行為および事前運動を行ったとして起訴された。第一審判決は、複数の買収行為につき、それぞれ独立した犯罪の成立を認め、刑法45条前段(併合罪)および48条を適用して処断した。これに対し弁護人は、事前運動の性質等に照らし、一連の行為を包括的に捉えるべきではないかとして、罪数判断等の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件における買収行為は、公職選挙法において、選挙期間中であるか否かを問わず、その行為自体が類型的に強く禁止されている違法な選挙運動である。このような行為が複数回にわたって行われた場合、各行為は独立した悪性を有し、法益侵害も個別的になされているといえる。したがって、これらを一括して一つの事前運動の罪として把握するのではなく、判示された各事実(各買収行為)ごとに独立した犯罪が成立すると解するのが相当である。よって、第一審が併合罪として処断したことに違法はない。
結論
本件各買収行為については、各行為ごとに犯罪が成立し、併合罪として処断される。
実務上の射程
選挙犯罪における罪数決定の基準を示す。事前運動(公選法129条違反)の枠内で行われた行為であっても、買収(221条等)のようにそれ自体が独立した禁止規定を持つ重大な違法行為については、行為の個数に応じた併合罪となることを明示している。答案上、数個の買収行為がなされた場合の罪数処理において「各行為ごとに犯罪が成立する」とする根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)1676 / 裁判年月日: 昭和36年11月21日 / 結論: 棄却
一 公職選挙法第一二九条にいわゆる選挙運動は、選挙運動の期間中適法にすることができる選挙運動行為にかぎるものではない。 二 同法第二五二条は憲法第一三条、第一五条第一項、第一四条、第四四条に違反しない。