金員の供与が公職選挙法二二一条一項一号及び三号の双方の目的をもって行われた場合の罪数関係
公選法221条,刑法45条,刑法54条1項
判旨
公職選挙法221条1項各号に該当する複数の買収行為について、犯意の単一性や方法の共通性等が認められる場合には、包括して一罪(包括一罪)として構成することが可能である。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条1項各号に該当する複数の買収・供与行為がなされた場合において、それらを個別の数罪としてではなく、包括して一罪(包括一罪)として構成することができるか。
規範
公職選挙法違反(買収罪)における罪数判断において、個別の供与行為が時間的・場所的に近接し、かつ同一の目的(特定の候補者の当選等)に基づき、同様の手法で反復継続して行われる場合には、それらの各所為を個別の犯罪として分割せず、包括して一罪と解するのが相当である。
重要事実
被告人は、選挙に際して複数の有権者に対し、投票の取りまとめ等の報酬として金員を供与した。第一審判決は、判示された多数の供与行為のうち、一定の範囲の各所為(判示第一の一、二、四、五、七、八、一〇ないし一五、一七ないし一九)について、それぞれ包括して公職選挙法221条1項1号・3号(および3項3号)に該当する一罪として処断した。これに対し弁護人は、これらすべてを包括して一罪としているわけではないとした原審の判断を不服として上告した。
あてはめ
本件における各供与の所為は、特定の選挙において特定の候補者を当選させるという単一の目的に基づき、一連の選挙運動の中で行われたものである。原審が「各所為はそれぞれ包括して公職選挙法221条1項3号(1号)等に該当する」とした判断は、供与の相手方や時期に一定の広がりがあるものの、それらが刑事法上の評価として一罪を構成する範囲内にあることを認めたものである。したがって、個別の供与ごとに別罪を構成させるのではなく、一罪として包括的に把握する原判断は正当であるといえる。
結論
公職選挙法違反の各所為を包括して一罪とした原判断は相当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
選挙犯罪における包括一罪の成立範囲を認める実務上の指針となる。答案上は、数罪か一罪かが問題となる場面で、犯意の単一性や行為の継続性に着目し、一罪として処断する際の論拠(公選法の目的達成に向けた一体的行為)として活用できる。
事件番号: 昭和43(あ)766 / 裁判年月日: 昭和43年7月25日 / 結論: 棄却
選挙運動の費用と投票取りまとめ等の報酬とを一括して不可分の関係で供与したときは、その全体につき公職選挙法第二二一条第一項第一号、第三号の供与罪が成立する。