判旨
不作為犯に関する判例の法理は、積極的な動作を伴う作為犯の事案には直接適用されず、作為犯と不作為犯は峻別されるべきである。
問題の所在(論点)
作為犯として起訴された事案において、不作為犯に関する判例を引用して判例違反を主張し、その適法性を争うことができるか。
規範
作為犯(積極的な行為によって犯罪を実現する場合)については、不作為犯(期待された行為をしないことによって犯罪を実現する場合)に関する判断枠組みや判例の法理を直接援用することは適切ではない。
重要事実
被告人AおよびBは、特定の犯罪行為(詳細は判決文からは不明)について作為犯として起訴され、有罪判決を受けた。これに対し弁護人は、不作為犯に関する大法廷判決や朝鮮高等法院の判決等を引用し、法令違反や憲法違反、判例違反を理由として上告を申し立てた。具体的には、本件の行為が不作為犯の法理に照らして違法性が阻却される、あるいは構成要件に該当しないといった趣旨の主張がなされたものと推察される。
あてはめ
弁護人が引用した判例は不作為犯に関するものであるが、本件被告人らの行為は作為犯として認定されている。不作為犯と作為犯はその実行行為の性質が根本的に異なるため、不作為犯に関する判決は、作為犯である本件に対しては適切ではない。したがって、不作為犯の法理を前提とした判例違反の主張は、前提を欠くものといえる。また、朝鮮高等法院の判決は刑事訴訟法405条3号にいう「判例」には該当せず、上告理由の基礎となり得ない。
結論
本件各上告を棄却する。作為犯の事案において不作為犯の判例を援用する主張は、適法な上告理由に当たらない。
実務上の射程
事件番号: 昭和59(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和60年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を量刑の資料とする際、それが実質的に未起訴の犯罪を処罰する趣旨で考慮されたものでない限り、憲法31条及び39条には反しない。 第1 事案の概要:被告人は有印私文書偽造・同行使等の罪で起訴された。第一審判決は、本件各犯行の犯罪組成物件を没収するとともに、未起訴の事実(余罪)を量刑の資料として考慮…
答案上、作為と不作為の区別が問題となる場面で、不作為犯の成立要件(作為義務等)を論じるべきか、それとも作為犯の成否を論じるべきかを切り分ける際の論拠となる。作為犯が成立する事案に対し、不作為犯の議論を混同して展開することの不適切さを指摘する際に有用である。
事件番号: 昭和36(あ)2043 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
原判決は、刑法一九条一項三号、二項により押収にかかる「A印」と刻してある丸型印鑑一個を被告人らから没収するとしていること所論のとおりであつて、論旨引用の大審院昭和七年(れ)第六七五号同年七月二〇日判決の趣旨に相反するわけであるが、原判決が刑法一九条を適用して所論の印章を没収している以上、同条一項各号の適用に誤があつても…
事件番号: 昭和41(あ)2908 / 裁判年月日: 昭和42年9月7日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】有印私文書偽造・同行使罪の共謀が認められるためには、単に虚偽内容の文書を作成して資金を借り受ける意思や共謀があるだけでは足りず、特定の他人の名義を冒用して文書を偽造し、これを行使することについての具体的な認識ないし共謀が必要である。 第1 事案の概要:被告人Aは、共犯者BおよびCと、架空の溜池改修…
事件番号: 昭和28(あ)4639 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が定める「公平な裁判所」とは、裁判官が被告人と個人的な利害関係を持つ等の不偏不党性を欠く状態にない組織を指し、当事者が主観的に不公平と感じるか否かによって決まるものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所…
事件番号: 昭和31(あ)4343 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
私文書偽造罪の判示として「行使の目的を以て」なる文言の記載がなくとも判文の全体からその趣旨が認め得られるときは、判示として欠くるところはない。