判旨
被告人又は弁護人が公判期日に出頭せず、かつ弁護活動を行った形跡がない場合には、刑事訴訟法369条所定の「補償すべき費用」は生じない。
問題の所在(論点)
被告人が無罪の判決等を受けた際(本件では前掲本案の被告事件)、刑事訴訟法369条に基づき、国が被告人であった者に支払うべき費用の補償が発生するか。特に、公判への出頭や弁護活動が一切行われていない場合に、補償すべき費用が認められるかが問題となる。
規範
刑事訴訟法369条に基づく被告人に対する費用補償の対象となるのは、刑事訴訟の手続において被告人又は弁護人が実際に行った弁護活動等に起因して生じた費用に限られる。
重要事実
請求人である被告人は、当審の公判期日に出頭しなかった。また、被告人の弁護人についても、公判期日に出頭せず、かつ答弁書も提出していなかった。その他、弁護人が当審において被告人のために何らかの弁護活動を行ったと認められる資料は存在しなかった。
あてはめ
本件において、請求人及びその代理人(弁護人)は、公判期日への出頭を欠いており、書面の提出も行われていない。弁護活動の実施が全く認められない以上、同条にいう「被告人であった者がその防御のために要した費用」を観念する余地はない。したがって、法的に補償の対象となる実費等の費用が生じたとは認められない。
結論
本件補償請求は理由がないため、棄却される。
実務上の射程
本決定は、費用補償の前提として、実際の防御活動の存在が必要であることを示している。司法試験においては、費用補償の要件論として「防御のために要した費用」の解釈が必要となった際、具体的な弁護活動が皆無である場合の限界事例として参照し得る。
事件番号: 昭和34(し)45 / 裁判年月日: 昭和34年9月16日 / 結論: 棄却
第一審で無罪の判決があり、検察官のみが控訴したところ控訴審が第一審判決を破棄し、免訴の判決をした場合には、被告人は上訴費用の補償を請求することはできない。
事件番号: 昭和43(ひ)1 / 裁判年月日: 昭和44年1月25日 / 結論: その他
刑訴法三六八条は、検察官のみが上訴をした場合において、上訴が棄却され、または取り下げられる等、上訴が不当であつたことが判明したときに、当該審級の裁判所が被告人に対し、その審級において生じた費用を補償することを認めた規定であつて、検察官の上訴により破棄し差し戻されたその後の審級において、検察官の主張が窮極において否定され…
事件番号: 昭和30(ひ)1 / 裁判年月日: 昭和33年5月31日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】検察官が上告を申し立てた後にこれを取り下げた場合において、被告人が上告審で支出した費用については、刑事訴訟法188条の2第1項等の趣旨に鑑み、被告人に補償されるべきである。 第1 事案の概要:請求人Aは昭和25年政令第325号違反被告事件について、一審または二審で無罪ないし有利な判決を受けたが、検…
事件番号: 昭和38(ひ)2 / 裁判年月日: 昭和38年11月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不法行為に基づく損害賠償請求において、被害者が支出した弁護士費用と当該不法行為との間に相当因果関係が認められる場合には、その費用を損害として賠償請求することができる。 第1 事案の概要:不法行為によって損害を被った被害者が、加害者に対して損害賠償を求める訴訟を提起した。その際、被害者は訴訟追行のた…
事件番号: 昭和58(し)39 / 裁判年月日: 昭和58年9月27日 / 結論: 棄却
刑訴法一八八条の二第一項は、費用の補償をすべき場合を無罪の判決が確定したときに限り、公訴棄却の判決が確定したときを含まない趣旨である。