第一審で無罪の判決があり、検察官のみが控訴したところ控訴審が第一審判決を破棄し、免訴の判決をした場合には、被告人は上訴費用の補償を請求することはできない。
第一審で無罪の判決があり検察官のみが控訴したところ控訴審が第一審判決を破棄し免訴の判決をした場合被告人は上訴費用の補償を請求することができるか。
刑訴法368条
判旨
高等裁判所がした上訴費用補償請求の棄却決定に対しては刑訴法428条2項の異議申立てが可能であり、同法433条の特別抗告をすることはできない。また、第一審の無罪判決に対し検察官が控訴し、控訴審で免訴判決がなされた場合、被告人は上訴費用の補償を請求することはできない。
問題の所在(論点)
1.高等裁判所による上訴費用補償請求の棄却決定に対し、刑訴法433条に基づく特別抗告を行うことができるか。 2.第一審の無罪判決に対し検察官が控訴し、控訴審で免訴判決が言い渡された場合に、被告人は上訴費用の補償を請求できるか。
規範
1.高等裁判所がした上訴費用補償請求の棄却決定は、刑訴法370条3項により同法428条2項の異議申立ての対象となるため、同法433条にいう「法律により不服を申し立てることができない決定」には該当しない。 2.刑事訴訟法上の費用補償制度において、第一審で無罪判決を受け、検察官の控訴により控訴審で免訴判決を受けたとしても、上訴費用の補償を請求する権利は認められない。
重要事実
被告人が第一審で無罪判決を受けたが、これに対して検察官が控訴を提起した。控訴審において審理がなされた結果、免訴の判決が言い渡された。被告人は、当該控訴審に要した費用の補償を求めて高等裁判所に請求したが、高等裁判所はこれを棄却する決定を下した。被告人はこの決定を不服として、最高裁判所に特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和58(し)39 / 裁判年月日: 昭和58年9月27日 / 結論: 棄却
刑訴法一八八条の二第一項は、費用の補償をすべき場合を無罪の判決が確定したときに限り、公訴棄却の判決が確定したときを含まない趣旨である。
あてはめ
1.手続面について、刑訴法370条3項は上訴費用の補償決定に対する不服申立てにつき、抗告に関する規定を準用している。高等裁判所の決定に対する不服は同法428条2項の異議申立てによるべきであり、他に不服申立方法が存在するため、特別抗告の要件を満たさない。 2.実体面について、費用補償の対象は限定的に解すべきであり、控訴審の結果が免訴にとどまる場合には、無罪判決が確定したのと同視できる特段の事情がない限り、補償請求の根拠を欠く。本件では免訴判決がなされているため、補償を認めない判断は正当である。
結論
本件抗告は不適法であり棄却される。また、第一審無罪・控訴審免訴の場合、被告人は上訴費用の補償を請求できない。
実務上の射程
裁判所の判断に対する不服申立構造の確認(異議申立てと特別抗告の排他性)を示す。また、費用補償の要件として「無罪判決」の存在が必要であり、免訴判決の場合には原則として補償が認められないという実務上の限界を画するものである。
事件番号: 昭和29(し)28 / 裁判年月日: 昭和29年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復請求を棄却した決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:抗告人は、名古屋高等裁判所が昭和29年5月21日に行った上訴権回復請求を棄却する決定に対し、最高裁判所に特別抗告を申し立てた…
事件番号: 昭和51(し)76 / 裁判年月日: 昭和51年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復および上告申立を棄却する高等裁判所の決定に対しては、高等裁判所への異議申立が認められているため、刑訴法433条に基づく最高裁判所への直接の抗告は許されない。 第1 事案の概要:申立人は、上訴権回復の申立および上告申立をいずれも棄却した高松高等裁判所の決定(原決定)に対し、別途同裁判所に異…
事件番号: 昭和57(し)26 / 裁判年月日: 昭和57年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する特別抗告(刑訴法433条)は、対象となる決定又は命令に対し、法上他に不服を申し立てることができない場合に限り許容される。 第1 事案の概要:申立人は、原決定に対し、刑訴法419条および421条に基づき、高等裁判所に対して通常の抗告をすることが可能な状況にあった。しかし、申立人は通…
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…