判旨
住居侵入罪の法定刑の上限を超える罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
確定判決(略式命令)において、法定刑の最高額を超過する罰金刑を科したことが、刑事訴訟法458条1号にいう「法令に違反し、且つ被告人のため不利益である」場合に該当するか。
規範
非常上告において、判決が法令に違反し、かつ被告人のため不利益であると認められるときは、原判決を破棄し、被告事件について更に判決を言い渡さなければならない(刑訴法458条1号但書)。刑法等の規定により定められた法定刑の最高額を超過する刑を科すことは、法令違反かつ不利益な処分に該当する。
重要事実
被告人は住居侵入の事実により、簡易裁判所の略式命令において罰金1万円に処され、当該命令は確定した。しかし、当時の刑法130条および罰金等臨時措置法3条1項1号に基づく住居侵入罪の罰金刑の法定刑最高額は2,500円であった。
あてはめ
本件における住居侵入罪の罰金法定上限は2,500円である。これに対し、原略式命令は被告人に罰金1万円を科しており、法律が許容する範囲を明らかに逸脱している。このような法定刑過剰の言渡しは法令に違反するものであり、かつ本来課されるべき刑よりも重い負担を被告人に強いるものであるから、被告人のため不利益であることは明白といえる。
結論
原略式命令を破棄する。被告人を法定刑の範囲内である罰金2,500円に処する。
実務上の射程
非常上告における破棄自判の典型例を示す判決。罪刑法定主義の観点から、確定判決であっても法定刑を逸脱した不利益な刑罰については救済が必要であることを示しており、答案上は非常上告の要件充足性を検討する際の基礎的事例として活用できる。
事件番号: 昭和38(さ)5 / 裁判年月日: 昭和38年8月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪の罰金刑の法定最高額を超える刑を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益であることが明らかであるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により、簡易裁判所から罰金3,000円の略式命令を受け、これが確定した。しかし、当時の刑法130条およ…