判旨
談合罪における「公正な価格を害する目的」の認定は、単に談合金の授受があった事実のみから当然に推認されるものではないが、諸般の事情を総合して認定することが可能である。また、裁判の迅速が欠けたとしても、それ自体は判決破棄の理由とはならない。
問題の所在(論点)
1. 談合罪の成立要件である「公正な価格を害する目的」を、談合金の授受等の事実から認定することができるか。2. 裁判の迅速が損なわれた場合、直ちに判決の破棄事由となるか。
規範
刑法96条の3第2項(当時の規定)の談合罪における「公正な価格を害する目的」の存否は、単に談合金の授受が行われたという一事をもって直ちに推認されるものではない。しかし、談合金の授受以外に、犯行の内容や回数、競売・入札の具体的状況等の諸事情を総合して当該目的を認定することは妨げられない。また、憲法37条1項の迅速な裁判の保障に反する結果が生じたとしても、それが当然に判決の破棄事由になるものではない。
重要事実
被告人らは、公の競売または入札に関して談合を行い、談合金の授受等を行ったとして、談合罪(刑法96条の3第2項)およびその幇助で起訴された。原審は、被告人らに「公正な価格を害する目的」があったと認めて有罪判決を下したが、被告人側は、談合金を支払っても自己の利潤を削ることで公正な価格の範囲内で落札し得る以上、談合金の授受のみから目的を推認することはできないと主張して上告した。また、審理の遅延による憲法37条1項違反も主張した。
あてはめ
1. 目的の認定について:原判決は、単に談合金が授受された事実のみを捉えて目的を推認したのではなく、本件犯行の内容や回数といった具体的な具体的事実関係を総合的に考慮して判断している。したがって、談合金の授受から直ちに目的を認定したとする上告人の主張は前提を欠く。2. 裁判の迅速について:最高裁の確立した判例によれば、仮に審理が迅速を欠き憲法の趣旨に反する結果となったとしても、そのこと自体が直ちに判決を破棄すべき理由となるものではない。本件においても、この判例を変更すべき理由は見当たらない。
結論
被告人らの上告を棄却する。談合罪における「公正な価格を害する目的」の認定および裁判の迅速に関する原判決の判断に、上告理由となるような違法はない。
実務上の射程
談合罪の目的要件の認定手法を確認する際、および裁判の遅延を理由とする判決破棄(免訴等)を否定する従来の判例法理を引用する際に活用できる。特に目的要件については、談合金の授受という外形的事実に加え、実質的な価格形成への影響を推認させる具体的事実の摘示が必要であることを示唆している。
事件番号: 昭和30(あ)814 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公契約の入札において、工事の実費及び相当な利潤に加えて「談合金」を加算して入札価格を決定することは、競売入札妨害罪における「公正な価格」を害するものと解される。 第1 事案の概要:被告人らは、公的機関が発注する工事の入札に際し、入札参加者間で事前に談合を行った。その際、工事の施工に直接必要な実費や…
事件番号: 昭和29(あ)4165 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公売等入札妨害罪(刑法96条の6第2項)における「不正の利益を得る目的」の成立には、必ずしも「公正な価格を害する目的」があることを要しない。 第1 事案の概要:被告人らは、公的機関が実施する入札(公売等)において、事前に特定の業者を落札者と決め、他の業者がそれに協力する等の談合行為を行った。弁護側…