判旨
公売等入札妨害罪(刑法96条の6第2項)における「不正の利益を得る目的」の成立には、必ずしも「公正な価格を害する目的」があることを要しない。
問題の所在(論点)
刑法96条の6第2項(旧96条の3第2項)の談合罪における「不正の利益を得る目的」の成否を判断するにあたり、「公正な価格を害する目的」が包含されている、あるいは不可欠な前提となっている必要があるか。
規範
刑法96条の6第2項(旧96条の3第2項)の談合罪における「不正の利益を得る目的」は、公売等の公正を害する目的とは独立した要件として解される。したがって、談合によって成立した価格が結果として公正な価格の範囲内であったとしても、あるいは公正な価格を害する意図が直接的には認められなかったとしても、当該目的の成立は否定されない。
重要事実
被告人らは、公的機関が実施する入札(公売等)において、事前に特定の業者を落札者と決め、他の業者がそれに協力する等の談合行為を行った。弁護側は、大審院時代の判例を引用し、談合罪が成立するためには「公正な価格を害する目的」が必要であり、単に利益を得る目的だけでは足りないと主張して上告した。なお、具体的な入札案件の詳細や談合の具体的な態様については、本判決文からは不明である。
あてはめ
最高裁判所は、弁護人が主張する「公正な価格を害するのでなければ不正の利益といえない」とする大審院判例の解釈を採用せず、昭和32年1月22日の大法廷判決(※本判決が引用する先行判例)の趣旨を維持した。談合罪は、公売等の公正を害する行為自体を罰するものであり、「不正の利益を得る目的」は、その公正な手続を歪めて自己または第三者の利益を図る主観的意図があれば足りる。したがって、公正な価格への影響の有無にかかわらず、談合によって利益を得ようとする目的が認められる以上、同罪は成立すると解される。
結論
談合罪の成立に「公正な価格を害する目的」は不要であり、入札の公正を害し、自己または他人の利益を図る目的があれば「不正の利益を得る目的」が認められる。
実務上の射程
答案上は、談合罪(刑法96条の6第2項)の目的犯としての主観的要件を論じる際に用いる。本罪の保護法益が「入札の公正」そのものであることを踏まえ、価格の妥当性といった結果のいかんを問わず、談合の合意自体から「不正の利益を得る目的」を認定できるとする論理構成に資する。
事件番号: 昭和29(あ)3198 / 裁判年月日: 昭和32年1月22日 / 結論: 棄却
一 刑法第九六条ノ三第二項にいわゆる「公正ナル価格」とは、入札を離れて客観的に測定さるべき価格をいうのではなく、その入札において公正な自由競争が行われたならば成立したであろう落札価格をいうのである。 二 右条項にいわゆる「不正ノ利益」とは、談合による利益が社会通念上いわゆる「祝儀」の程度を越え、不当に高額である場合をい…