判旨
公売入札等の妨害罪(談合罪)における「公正な価格を害する目的」とは、公正な自由競争により形成されるべき価格よりも入札施行者に不利益な価格を形成する目的をいい、「不正の利益を得る目的」とは、公正な価格が害されることを認識しつつ談合の対価を授受する目的をいう。
問題の所在(論点)
旧刑法96条の3第2項(現行刑法96条の6第2項)の公売等入札妨害罪(談合罪)における、「公正な価格を害する目的」および「不正の利益を得る目的」の意義が問題となった。
規範
1.「公正な価格を害する目的」とは、入札施行者にとって、公正なる自由競争により到達すべき価格よりも不利益な価格を形成する目的を指す。2.「不正の利益を得る目的」とは、入札者が談合により利益を得ることを目的(または認識)し、かつその利益が不正であることを認識していることを要する。具体的には、談合の結果として公正な価格が害されることを認識しながら、談合の対価を授受する意思があればこれに該当する。
重要事実
被告人らは、公売入札等の施行に際し、あらかじめ協定落札者を決定した。その上で、当該落札者が自己の工事の実費に相当な利潤を加えた額に加え、さらに請負代金の約5パーセントに相当する「談合金額」を加算したものを入札金額として提示した。このようにして入札施行者にとって不利益な価格形成を行い、談合の対価を授受しようとした事実(第一審判決判示事実)について、談合罪の成否が争われた。
あてはめ
本件では、協定落札者が本来の適正な請負代金(実費+相当利潤)に、談合のための加算金を上乗せして入札を行っている。これは、自由な競争があれば到達したはずの価格よりも高い価格を入札施行者に強いるものであり、「公正な価格を害する目的」が認められる。また、入札者がこのような価格形成により公正な価格が損なわれることを認識しつつ、談合の対価(約5パーセントの談合金)を授受する意思を持って行っていることから、「不正の利益を得る目的」も充足されると解される。
結論
被告人らの行為には、公正な価格を害する目的および不正の利益を得る目的が認められるため、談合罪が成立する。
実務上の射程
談合罪の主観的要件に関するリーディングケースである。特に「公正な価格」を市場競争価格(理想的価格)と解し、それとの乖離をもたらす意図を重視する実務上の枠組みを示している。答案上は、談合スキームの中に「上乗せ金」や「対価の授受」がある場合に、本判例の定義を引用して主観的要件を充足させるのが定石である。
事件番号: 昭和29(あ)2502 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
被告人が、自由競争によれば百六十五万円位で入札する予定であつたものを、談合の上、被告人の会社の入札金額を百九十二万八千円と記載し、他の入札金額をこれよりも高額に記入させて入札せしめた場合には刑法第九六条ノ三にいう公正なる価格を害する目的で談合したものである。
事件番号: 昭和29(あ)4165 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公売等入札妨害罪(刑法96条の6第2項)における「不正の利益を得る目的」の成立には、必ずしも「公正な価格を害する目的」があることを要しない。 第1 事案の概要:被告人らは、公的機関が実施する入札(公売等)において、事前に特定の業者を落札者と決め、他の業者がそれに協力する等の談合行為を行った。弁護側…