原判決が「相手が襲撃して来た際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的を以て兇器を準備して身内の者とともに集合した」被告人の本件所為を兇器準備集合罪に当るとしたのは正当である。被告人の所為が積極的にいわゆる殴り込みをかけようとしたのではなく相手の襲撃を防ぐためであつたとしても、これを迎撃して相手を殺傷する目的があつた以上、正当防衛の観念を容れる余地はない。
相手が襲撃して来た際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的を以て兇器を準備して身内の者とともに集合した場合の擬律と刑法第三六条。
刑法208条ノ2,刑法36条
判旨
相手方の襲撃に際してこれを迎撃し、共同して殺傷する目的で凶器を準備して集合した以上、たとえそれが防衛のためであったとしても、凶器準備集合罪が成立し、正当防衛の余地はない。
問題の所在(論点)
相手方の襲撃を迎え撃ち、反撃して殺傷する目的で凶器を準備して集合した場合に、刑法208条の2第1項の「害を加える目的」が認められるか。また、防衛の意図があるとして正当防衛が成立するか。
規範
凶器準備集合罪(刑法208条の2)における「他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的」は、積極的に攻撃を加える場合に限られない。相手方の攻撃を予期し、これに迎撃・反撃を加えて殺傷する目的であっても、共同して害を加える目的があるといえる。また、このような目的で対抗的な暴行を準備する行為には、正当防衛の成立を認める余地はない。
重要事実
被告人は、対立する相手方が襲撃してくることを予期し、これに際して相手方を迎撃し、共同して殺傷する目的をもって、凶器を準備した上で身内の者とともに集合した。被告人側は、自ら積極的にいわゆる「殴り込み」をかける意図はなかったが、相手方の襲撃を迎え撃つ態勢を整えていた。
事件番号: 昭和36(あ)2709 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
進んで出撃しようとしたのではなくても、相手が襲撃してきた際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的をもつて、兇器を準備し身内の者を集合させたときは、刑法第二〇八条の二第二項の罪が成立する。
あてはめ
被告人の目的は、相手方の襲撃に際してこれに反撃を加え、共同して殺傷することにある。これは受動的な防御にとどまらず、他人の身体に対する攻撃を前提とした「共同して害を加える目的」に該当する。また、あらかじめ殺傷を目的として凶器を準備・集合する行為は、急迫不正の侵害に対するやむを得ない防衛行動とは認められず、法的に正当な防衛の観念を容れる余地はない。
結論
被告人の所為には凶器準備集合罪が成立し、防衛の目的があったとしても正当防衛は成立しない。
実務上の射程
自招侵害や対抗部類における正当防衛の成否を論じる際、本判例は「迎撃目的」がある場合の違法性阻却を否定する有力な論拠となる。実務上、凶器準備集合罪の主観的要件(害加目的)は、攻撃的な意図のみならず、迎撃的な意図であっても認められると解釈する際の基準として用いられる。
事件番号: 昭和56(あ)950 / 裁判年月日: 昭和58年11月22日 / 結論: 棄却
いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪において共同加害目的があるというためには、行為者が、相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性を認識している必要はなく、相手方からの襲撃のありうることを予想し、襲撃があつた際にはこれを迎撃して相手方の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える意思を有していれば足りる。
事件番号: 昭和38(あ)1179 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: 棄却
一 原判決認定の事実関係のもとにおいては、被告人の兇器準備集合の所為と暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の所為とを併合罪とした原判決の判断は相当である。 二 (原判決の要旨) 兇器準備集合罪は個人の生命、身体、財産をも保護法益としているものであり、また事実関係としては暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条違反の行為の予備的段階た…
事件番号: 昭和51(あ)671 / 裁判年月日: 昭和52年7月21日 / 結論: 棄却
刑法三六条における侵害の急迫性は、当然又はほとんど確実に侵害が予期されただけで失われるものではないが、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは失われることになる。