一 原判決認定の事実関係のもとにおいては、被告人の兇器準備集合の所為と暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の所為とを併合罪とした原判決の判断は相当である。 二 (原判決の要旨) 兇器準備集合罪は個人の生命、身体、財産をも保護法益としているものであり、また事実関係としては暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条違反の行為の予備的段階たる面もあるが、前者は共同加害行為の前段階において二人以上の者が兇器を準備しまたはその準備あることを知つて集合することを禁圧するためとくに規定が設けられたものであつて、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものであるから、前者が発展して後者の犯罪がなされた場合においても、前者は後者に吸収されることなく各個に犯罪が成立し、両罪は併合罪の関係にあるものとするのが相当である。
兇器準備集合の所為と暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の所為の罪数関係。
刑法208条ノ2,刑法45条,暴力行為等処罰ニ関スル法律1条
判旨
凶器準備集合罪と、その後の暴行等による暴力行為等処罰法違反の罪は、併合罪(刑法45条前段)の関係に立つ。
問題の所在(論点)
凶器準備集合罪の罪数関係が問題となる。具体的には、凶器準備集合罪と、その後の暴力行為等処罰法違反の罪との関係は、一罪(吸収関係や観念的競合)か、それとも併合罪か。
規範
凶器準備集合罪(刑法208条の2)が成立し、その後さらに具体的な暴力行為(暴力行為等処罰法違反等)が行われた場合、両罪は保護法益や行為の態様を異にする別個の犯罪として、併合罪(刑法45条前段)となる。
重要事実
被告人が、他人に害を加える目的で凶器を準備して集合した(凶器準備集合罪)。その後、被告人はさらに特定の暴力行為に及んだ(暴力行為等処罰ニ関スル法律違反)。原審はこれら2つの行為を併合罪として処断した。
事件番号: 昭和47(あ)159 / 裁判年月日: 昭和48年2月8日 / 結論: 棄却
被告人が、甲ほか一一名と共謀のうえ、乙らに危害を加える目的をもつて、某日午後一一時頃から翌日午前二時三〇分頃までの間、某市内の乙方およびその付近路上ならびに同市内の甲方において猟銃、日本刀、包丁等の兇器を準備し、またはその準備のあることを知つて集合したという兇器準備集合の罪と、右某日午後一一時頃乙方において乙に対し所携…
あてはめ
凶器準備集合罪は、共同して暴行等を行う予備的段階における公共の安全を保護法益とする罪である。これに対し、暴力行為等処罰法違反は具体的な身体・自由等に対する侵害を内容とする。両者は行為の性質が異なるため、原判決が認定した事実関係(詳細は判決文からは不明)の下では、併合罪とするのが相当である。
結論
被告人の凶器準備集合の所為と暴力行為等処罰法違反の所為は、併合罪として処理される。
実務上の射程
凶器準備集合罪と後続の暴行・傷害罪等の罪数関係を検討する際の基礎となる判例である。集合行為自体で完結する公共の平穏に対する罪と、その後に派生した個別的な侵害行為は別罪として併科されるという実務上の運用を支えている。答案上では、予備的行為が独立して処罰対象となる趣旨から、後続の実行行為に吸収されないことを端的に述べる際に用いる。
事件番号: 昭和42(あ)2277 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
被告人らが、共謀のうえ、甲らに危害を加える目的をもつて、猟銃、日本刀等の兇器を準備し、または準備のあることを知つて、某所に集合したという兇器準備集合の所為と、その集合の直後、集合場所付近において、甲の身体を手拳で殴打し、足蹴にするなどし、かつ、甲に対し「横着だぞ」等と怒号し、もつて数人共同し、多衆の威力を示して暴行、脅…
事件番号: 昭和51(あ)1978 / 裁判年月日: 昭和53年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法208条の2の凶器準備集合罪の構成要件は、憲法31条が要求する明確性の原則に反せず、その法定刑も著しく均衡を失うものではないため、合憲である。 第1 事案の概要:被告人らは、凶器準備集合罪(刑法208条の2)に問われたが、同条の構成要件(「共同加害目的」「凶器」等の概念)が不明確であり、かつ法…
事件番号: 昭和36(あ)2709 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
進んで出撃しようとしたのではなくても、相手が襲撃してきた際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的をもつて、兇器を準備し身内の者を集合させたときは、刑法第二〇八条の二第二項の罪が成立する。