兇器準備集合の所為とその継続中における暴力行為等処罰に関する法律一条違反の所為とが併合罪の関係にあるとされた事例
刑法45条,刑法54条1項,刑法208条の2,暴力行為等処罰法1条
判旨
凶器準備集合罪と暴力行為等処罰法違反(共同暴行等)の罪数関係につき、前者は公共的平穏も保護法益とするため、後者の単なる手段とは評価できず、牽連犯ではなく併合罪となる。
問題の所在(論点)
凶器準備集合罪と暴力行為等処罰法違反の罪が、刑法54条1項後段の「犯罪の手段……であるとき」にあたり、牽連犯として処理されるべきか、それとも併合罪となるか。
規範
刑法54条1項後段の牽連犯とは、ある犯罪が他の犯罪の手段となっている関係をいうが、それは社会通念上、当該犯罪が他罪の手段・結果の関係にあることを要する。犯罪の保護法益が異なり、一方の罪が他方の罪の手段としての評価を越える独自の不法内容を有する場合には、通常、手段・結果の関係にあるとはいえず、併合罪(刑法45条)となる。
重要事実
被告人らは、他人に加害する目的で凶器を準備して集合し(凶器準備集合)、その後、実際に特定の被害者に対して暴行等の行為(暴力行為等処罰に関する法律違反)に及んだ。被告人側は、凶器準備集合は暴力行為の手段であるとして、牽連犯による科刑上の一個の罪として扱われるべきであると主張して上告した。
あてはめ
凶器準備集合罪は、個人の生命、身体または財産のみならず、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とする罪である。これに対し、暴力行為等処罰法違反は主として特定の個人に対する侵害を内容とする。凶器準備集合の所為は、その後の暴力行為の手段としての側面があるとしても、公共的平穏を害するという独自の不法価値を有しており、単なる手段とのみ評価することはできない。したがって、両罪は社会通念上、通常手段・結果の関係にあるとはいえない。
事件番号: 昭和47(あ)159 / 裁判年月日: 昭和48年2月8日 / 結論: 棄却
被告人が、甲ほか一一名と共謀のうえ、乙らに危害を加える目的をもつて、某日午後一一時頃から翌日午前二時三〇分頃までの間、某市内の乙方およびその付近路上ならびに同市内の甲方において猟銃、日本刀、包丁等の兇器を準備し、またはその準備のあることを知つて集合したという兇器準備集合の罪と、右某日午後一一時頃乙方において乙に対し所携…
結論
凶器準備集合罪と暴力行為等処罰法違反の罪は、牽連犯ではなく、併合罪と解すべきである。
実務上の射程
本判決は、予備的性格を持つ罪(凶器準備集合罪)と、その後の実行行為(暴力行為)が重なり合う場合の罪数関係を示したものである。答案上は、両罪の保護法益(公共的平穏vs個人的法益)の違いを強調し、「手段・結果の関係」を否定する論理として活用できる。同様の論理は、住居侵入罪と他の犯罪の罪数関係の議論などにも応用可能だが、本件のような公共的法益を含む犯罪では併合罪となる傾向が強いことに注意する。
事件番号: 昭和42(あ)2277 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
被告人らが、共謀のうえ、甲らに危害を加える目的をもつて、猟銃、日本刀等の兇器を準備し、または準備のあることを知つて、某所に集合したという兇器準備集合の所為と、その集合の直後、集合場所付近において、甲の身体を手拳で殴打し、足蹴にするなどし、かつ、甲に対し「横着だぞ」等と怒号し、もつて数人共同し、多衆の威力を示して暴行、脅…
事件番号: 昭和38(あ)1179 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: 棄却
一 原判決認定の事実関係のもとにおいては、被告人の兇器準備集合の所為と暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の所為とを併合罪とした原判決の判断は相当である。 二 (原判決の要旨) 兇器準備集合罪は個人の生命、身体、財産をも保護法益としているものであり、また事実関係としては暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条違反の行為の予備的段階た…