被告人が、甲ほか一一名と共謀のうえ、乙らに危害を加える目的をもつて、某日午後一一時頃から翌日午前二時三〇分頃までの間、某市内の乙方およびその付近路上ならびに同市内の甲方において猟銃、日本刀、包丁等の兇器を準備し、またはその準備のあることを知つて集合したという兇器準備集合の罪と、右某日午後一一時頃乙方において乙に対し所携の包丁、日本刀を示し、「指を詰めろ」等と申し向け、手拳等でその身体を殴打し、あるいは足蹴にする等し、もつて数人共同して兇器を示し、かつ、多衆の威力を示して暴行、脅迫を加えたという暴力行為等処罰に関する法律一条違反の罪とは、併合罪の関係にある。
兇器準備集合の罪とその継続中における暴力行為等処罰に関する法律一条違反の罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
刑法45条,刑法54条1項,刑法208条2第1項,暴力行為等処罰に関する法律1条
判旨
凶器準備集合罪と暴力行為等処罰法違反(集団的暴行等)の罪は、保護法益の差異から通常手段結果の関係にあるとはいえず、牽連犯ではなく併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
凶器準備集合罪の罪と暴力行為等処罰に関する法律違反(暴行等)の罪との間に、刑法54条1項後段の牽連犯が成立するか。
規範
刑法54条1項後段の牽連犯とは、犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる場合をいうが、これが認められるには、複数の罪がその性質上、通常手段結果の関係にあることを要する。判断にあたっては、各罪の保護法益や構成要件的性質を考慮すべきである。
重要事実
被告人は、凶器を準備して集合し(凶器準備集合罪)、その後、当該凶器を用いて暴力行為等処罰に関する法律に違反する暴行等の行為に及んだ。この両罪の罪数関係について、手段と結果の関係にあるとして牽連犯(科刑上一罪)となるか、あるいは併合罪となるかが争われた。
あてはめ
凶器準備集合罪は、個人の生命、身体、財産のみならず、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものである。これに対し、暴力行為等処罰法違反の所為は特定の対象に対する侵害を主眼とする。このような保護法益の重なり合いの性質に鑑みれば、前者の所為を後者の所為に対する単なる手段とのみ評価することはできない。したがって、両罪は通常手段結果の関係にあるというをえない。
結論
凶器準備集合罪と暴力行為等処罰法違反の罪は、牽連犯ではなく併合罪(刑法45条前段)となる。
実務上の射程
凶器準備集合罪が「公共の平穏」という独自の保護法益を有することを根拠に、実質的罪数を否定し併合罪とする極めて重要な判例である。答案上は、罪数論において「通常手段結果の関係」の有無を判断する際、保護法益の共通性の欠如を指摘する文脈で活用すべきである。
事件番号: 昭和42(あ)2277 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
被告人らが、共謀のうえ、甲らに危害を加える目的をもつて、猟銃、日本刀等の兇器を準備し、または準備のあることを知つて、某所に集合したという兇器準備集合の所為と、その集合の直後、集合場所付近において、甲の身体を手拳で殴打し、足蹴にするなどし、かつ、甲に対し「横着だぞ」等と怒号し、もつて数人共同し、多衆の威力を示して暴行、脅…
事件番号: 昭和38(あ)1179 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: 棄却
一 原判決認定の事実関係のもとにおいては、被告人の兇器準備集合の所為と暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の所為とを併合罪とした原判決の判断は相当である。 二 (原判決の要旨) 兇器準備集合罪は個人の生命、身体、財産をも保護法益としているものであり、また事実関係としては暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条違反の行為の予備的段階た…
事件番号: 昭和51(あ)1978 / 裁判年月日: 昭和53年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法208条の2の凶器準備集合罪の構成要件は、憲法31条が要求する明確性の原則に反せず、その法定刑も著しく均衡を失うものではないため、合憲である。 第1 事案の概要:被告人らは、凶器準備集合罪(刑法208条の2)に問われたが、同条の構成要件(「共同加害目的」「凶器」等の概念)が不明確であり、かつ法…
事件番号: 昭和36(あ)2709 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
進んで出撃しようとしたのではなくても、相手が襲撃してきた際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的をもつて、兇器を準備し身内の者を集合させたときは、刑法第二〇八条の二第二項の罪が成立する。